序章 引退 (東編)

◇夏の暑い暑い日、大きなドームで関東陸上競技大会が開かれていた。


ピーーッッ!!


始まり笛の合図で私は、走り出した。最初は、姿勢を低く。

そう心の中で呟きながら、全力で走った。

いつも練習でしていた走り方で、いつものように、焦らず自分のペースで...

私は、リラックスして、頭の中で走っている自分をイメージしながら走った。

音楽のようにリズムに乗ってまるでまちなかで優雅に踊っている踊り子のように...

そうイメージしつつ左足に体重を乗せた途端、私の左足に電撃のような痛みが走った。


「痛ッ!!!」


私は、今までに出したことないくらいのスピードから最低速にどんどん下がっていった。少しして、レーンの内側の芝生の部分に仰向けになった。私は、今までに感じたことはない痛みで声を出すことができなかったし、何より自分の顔から滝のように出る涙に驚きを隠せなかった。悔しさと痛みという感情が混ざった涙。そのうち、大会のメディカルの人たちが担架をもって、私のそばに来た、

「声は聞こえますか?」や「体持ち上げますよ。」などという声が聞こえ、私は眠るように意識を失った。



………


目が覚めた時、私は病院のベットに倒れていた。一瞬困惑したがすぐに自分の状況が理解できた。


「そっか、私負けたんだ...」


ボソッと自分の喉から息のように言葉が出てきた。そのあと私は、悔しさでまた泣いてしまった。そこへ医者の人と父親が病室の扉を開けて入ってくるのが見えた。

医者は、私の目の前においてある椅子に座ると口を開いた。


「目が覚めたんだね。よかった、、、昨日君がどうなったか覚えているかい?」


そう聞かれた私は、昨日、倒れたこと倒れたあとのことは覚えていないことなどを話した。そうしたら医者が衝撃的なことを口にした。


「実は、昨日君は”骨折”したんだ典型的な疲労骨折だよ。治るまでに少なくとも13週間程度は必要かな...」


「なんで骨折したんだろうって顔だね...君、トレーニングなどを最近やっていなかっただろう、それでケアができず疲労が溜まって、折れてしまったみたいだね。」


私は、唖然としてぽかんとしていた。たしかにトレーニングなどを怠っていたし、なにより最近は休みなくずっと走っていたから、折れてしまったのだなと理解した。

そんなこんなで私は、少しの間、リハビリをしながら入院をすることになった。


きれいな花が飾ってある花瓶をおいている棚においていた携帯から、ピリリリリッ!と着信音がなった。なんだろうと思って、携帯を見てみると、父親からの電話のようだった。


「莉央、急にごめんな。少し大事な用事があって...」


「大事な用事?」


「あぁ、莉央に会いたいと言っている高校の先生がいるんだが...今から莉央の病室に行ってもいいか?」


私は、返事をして父親と教員が病室に来るのを待った。


………


十分ほど立った時、病室に教員と父親が入ってきて、教員は、私の前に来ると軽くお辞儀をした。私は、会釈して教員が話し始めるのを待った。


「こんにちは、東莉央さんだね。私は、国立 蓬ヶ原よもぎがはら学園高等学校、陸上部顧問の”山中”です。実は、先日の陸上大会を見て、高校にも通用する走りだなと思い、この度は、蓬ヶ原よもぎがはら高等学校に推薦をしたく、莉央さんに会いに来ました。」


私は、少し戸惑った、なにしろ私は、関東大会で最下位だったからだ。怪我をしたッ私をなぜスカウトしにきたのだろうと考え、私は質問してみた。


「なぜ、もっと上の選手ではなく、私を選んだんですか?...」


そう聞くと、山中さんは、目を輝かせていった。


「莉央さんの走りは、とてもすごいものです。先日の大会のときの最高スピードは、今回の関東大会を優勝した選手よりも速いものでした!そんな選手を見逃すわけにはいきませんからね!」


「あのときの莉央さんは、すでに優勝した選手と5mも距離を離していました!」


「そう...ですか。」


あまりの熱量に私は、少し引いていたが、そのあと山中さんと話をしていくうちに、うちの高校で活躍してくれるならといろいろなものを提案してくれた。蓬ヶ原高校は、陸上もつよく運動部全般、まんべんなく強い強豪校だ。そんなところに推薦されたのだから、行くしかないと心に決めて、私は、二つ返事で推薦を許諾した。

そのあと、学校で大会や推薦について聞かれたり、クラスメイトに異常なほど話しかけられたりいろいろな事があったが、私の中学校生活もついに終りを迎えた。


そしてついに、長い長い白の季節が終わり、桜の季節となった。私は、制服に縫われた、金色の力強い紋章を軽く触り、リビングに向かった。リビングにつくと父親が私を見るなり、泣き出してしまった。


「あんなに小さかった莉央が、こんなに大きくなって...」


私は少し、恥ずかしかったが嬉しさもあった。これでお母さんに成長した自分を自慢できると思うと、嬉しかった。


そんな父親を横目に朝食を食べ、玄関に向かった。


そして、靴を履き、父親に聞こえるように「行ってきます!」と大きな声で言って、家を出た。


to be continued


この度は、「君と見た宙」序章(東編)を読んでいただきありがとうございます。

最新話の更新が遅れてしまいすみませんでした。

これからも「君と見た宇宙」を読んでいただけると嬉しいです。

これからも何卒、応援お願いいたします。

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