元プロさん、VTuberになる

第6話 元プロさん、VTuberにスカウトされる

「新elle式のお披露目……歴代最高ポイント更新……おいアミア、完璧な無双じゃね?」

『完璧のレベル超えてるから安心しな?』


 俺は最終ランキングを眺めながら、興奮収まらぬ声でアミアに話しかけた。


 やっぱFLOWは最高だ──!


『すげーな、ただの予選なのにツイッターとトレンド占拠してんぞ』

「マジ!? 俺も見てえ!」


 俺は机の上に雑に置いていたスマホを手に取り、全体重を背もたれにかけながらツイッターを開いた。


 そのついでに、FLOWは閉じた。


 ちなみに、elleのアカウントは5年前にFLOWをやめたと一緒に消したため、今使っているのはちょっとえっちな女の子がアイコンのアカウントである。


 フォロワーなんて当然0。一言も呟いてないんだけども。


 そして俺は、トレンドを開いた──!



1・ゲームトレンド

謎の新人

128,652件の投稿


2・日本のトレンド

#FLOWアジア大会

98,667件の投稿


3・ゲームトレンド

aMa復活

25,913件の投稿


4・ゲームトレンド

チーター

273,019件の投稿


5・ゲームトレンド

最高ポイント更新

17,934件の投稿


 ︙

 ︙



「…………ん?」


 俺はそれはもうめちゃくちゃ不思議に思って、更新しまくる。


 だが、一向に『elle復活』だの『elle最強』だの、俺に関する単語がトレンドに現れない。


「ど、どうなってんだ!?!?!?」

『いや、どうなってるも何も──』


 俺のめちゃくちゃ焦った声に、アミアは逆にめちゃくちゃ冷静にツッコミを入れてくる。


『そんなサブ垢でやっても騒がれねえって』

「……は?」


 サブ……垢……?


『え、気づいてなかったのか? もっかいゲーム開けって』


 アミアに言われるがまま、俺は高速でFLOWを開いた。


 アカウント選択画面では、アイコンと名前の下におつログインしたか、が書かれている。



 elle       Ray

 最終ログイン   最終ログイン

 4年前      12分前



「ああああああああああ!!!!!!!!!!」

『っだぁぁぁぁゆるっせえなああああああ!!!』


 ヘッドホンをつけたまま叫び、アミアに怒られてしまう。

 いや……それどころじゃない……!!!!


 え、新elle式がんばって開発したのに、サブ垢だった……?


 ちょっと待て。

 ってことは、この『チーター』ってもしかして……


 俺は『チーター』をタップする。

 すると、大会の切り抜き動画が一番上に表示された。


 そこには、『FLOWアジア大会予選、チーターが隠す気のない動きで1位になる笑笑』という文言とともに、俺の新技──超跳躍の切り抜き動画があった。


「あ、ああっ……あぁぁぁぁ!!!!」

『だからうるせえって!! リプ欄も見ろって!!』

『り、リプ欄……?』


 アミアにそう言われ、画面をスクロールする。



 FLOWアジア大会予選、チーターが隠す気のない動きで1位になる笑笑


 →チートじゃないぞ

 →何回か試したら俺もできた

 →お前もやってみろ



 チートではないという旨の返信が、ただのプレイヤーだけでなく有名プロゲーマーからも届いていた。


 しかし、そのツイ主を批判するようなツイートは一つもなかった。

 どれも、「新しいキャラコンだからやってみろ」といった感じの文章だった。


「流れ変わったな」

『お前が言うな。あと、変わったどころかもう終わったから。トレンド見てみ』


 アミアに言われるがままにまたトレンドを開いた。



1・ゲームトレンド

Ray

300,256件の投稿


2・ゲームトレンド

期待の新人

119,302件の投稿


3・日本のトレンド

#FLOWアジア大会

100,025件の投稿


4・ゲームトレンド

aMa復活

46,589件の投稿


5・ゲームトレンド

aMaとRay

16,891件の投稿


 ︙

 ︙



「ふぁぁ……」

『声帯無くなった?』


 い、いや、さすがにバズり過ぎでは……? FLOWそんなに進展無かったんか……?


 そんなことを思っていると、ピコンという軽快な通知音が鳴った。


 FLOW内のダイレクトメッセージだった。

 基本的にここは企業からしか届かない……あれ、もしかしてチートって判断になったのか……?


 俺はそんなことを思いながら、恐る恐るDMを開いた。


 そこには、




『VTuber事務所、STAR SKYの者です。Ray様をVTuberとしてスカウトしたいと思い、連絡した次第でございます。下記のメールアドレスに連絡していただけると幸いです』




 eスポーツをメインとする日本最高峰のVTuber事務所からの、スカウトだった。

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