第20話  そして広島!

「崔さん、スゴイ美人と付き合ってたんじゃなかったの?」

「うん、付き合ってました。女子アナみたいな女性でした。でも、別れました。彼女は東京へ行ったんですよ。本部に呼ばれて出世コース。ということで、僕は捨てられたんです」

「じゃあ、近い内にナンパに行こうか」

「行きましょう! 女性を忘れるなら、新しく彼女を作るのが1番いいんです」



「で、ナンパに来たわけですが。天野さん、ちょっとパターンを変えてみませんか?」

「パターンを変える? どういうこと?」

「いつも昼間にナンパに来て、諦めて夕方か晩にテレクラ行ってたでしょう? 今回は、昼間からテレクラに行きませんか? 客層が違うと思うんですよ」

「なるほど、じゃあ、行こう」



「天野さん、2人組って少ないから、1人の女性を捕まえたら、お互い、アポに行きましょう。一緒にアポに行くんじゃなくて。2対1だと難しいから」


「崔さん、アポがとれたわ」

「早っ! でも、良かったですね」

「20代のフリーターらしいわ。じゃあ、俺は行くね」

「いってらっしゃい」


 負けじと、僕もアポを取った。30代のバツイチということだった。



 会った瞬間、“はい! ハズレ-!”と思った。30代なのは間違いない。太ってるというよりも、骨太、大柄。顔は(僕の好みからすると)下の上。“よく結婚出来たなぁ”と不思議に思った。ここは、撤退が1番いい。僕は、お茶だけで付き合って帰ろうと思った。


「とりあえず、お茶でも飲みましょうか?」

「えー! ホテルがいい」

「いきなりホテル?」

「うん、私、しばらくしてないから溜まってるのよ。スカッとさせてちょうだい」


 もう逃げられない。女性に恥をかかせるわけにはいかないからだ。僕達はホテルに入った。


 僕としては、何一つ盛り上がる要素が無かった。早くこの時間が終わってほしかった。ようやく、1回戦が終わって、シャワーを浴びようとした。早く身体を洗いたい。


「どこに行くの?」

「シャワー。シャワーを浴びたら帰るから」

「ちょっと待ってよ」


 その女性は、バッグから大きめの“大人のおもちゃ”を取りだした。


「今度はこれを使ってほしいんだけど、ダメ?」


“おいおい、大人のおもちゃ持参かよ、こんな奴、嫌や-!”


 その時、天野さんから電話がかかってきた。


「そっちはもう終わった?」

「終わりました-!」

「ほな、寮で作戦会議をしようよ」

「了解です。スグに行きます-! 寮に着いたら連絡します」


「先輩から呼ばれてるから、おもちゃで遊べなくなったわ、帰ろう!」



「いや-! 参りましたよ、天野さん」

「こっちも参ったよ、崔さん」

「そっちはどうでした?」

「まあ、20代には違いないと思うんだけど、またアザラシだった」

「それで、どうしたんですか?」

「コーヒーだけ飲んだ。誘われたけど、ホテルには行かんかったわ」

「ホテルを回避できたんですか? ラッキーでしたね」

「でも、電話番号を聞かれて教えてしまったから、電話がかかって来たらウザイかも」

「僕も電話番号を聞かれましたけど、一桁違いますよ」

「嘘の番号を教えたの?」

「嘘じゃないです、一桁、間違えたんです」

「崔さん、ずるいよ-!」

「だって、結構大きめの大人のおもちゃを持って来る女性ですよ。嫌でしょう?」

「マジ? カバンに入れて来てたの?」

「うん、カバンから取りだしたから引いてしまいましたよ」

「そりゃあ、引くわ」

「でも、1番は顔とスタイルでしょ? 美人とか、カワイイ娘(こ)やったらいいんですよね? でも、僕の相手もミラクルブサイクでしたから……。美人なら、おもちゃを持って来ても許すかもしれませんけど、あはははは」

「笑い事じゃないから」

「うーん、確かに、真面目に考えないといけませんね。ナンパだと、顔を見て声をかけているから成功したらOK! でも、なかなかお茶や食事以上の関係になれない。電話番号も教えてもらえないことが多い。テレクラは、会えるしホテルも行けるけどブサイクが多い。さて、どうしたらいいと思います?」

「うーん、それが問題なんよ。テレクラで、当たりに出会うまで頑張るか? ナンパでもっと頑張るか?」

「場所を変えてもいいかもしれませんね、大阪とか広島とか」

「あ、それいいかも。大阪でも広島でもいいけど、まずは広島に行こうか?」

「ほな、そうしましょう。そして、その次は大阪ということで」



 或る日、朝から広島に向けて天野さんの車で出動した。僕は広島は初めてだった。胸が高鳴る。見知らぬ土地に行くというのもいいものだ。お昼時には、広島市内の繁華街に着くことが出来た。


「とりあえず、飯を食おうか?」

「天野さん! 飯はナンパでゲットした女性達と食べましょう! ほら、岡山よりも遙かに人が多いし、垢抜けた女性も多いですよ。これは、ナンパするにはいい環境ですよ!」

「じゃあ、いっちょやってやりますか!」

「岡山魂を見せてくださいよ」

「じゃあ、崔さんは大阪魂を見せてね」

「いやいや、僕は何年も大阪を離れてるから」

「いやいや、どこからどう見ても大阪人だよ」

「あらら」

「イケてる娘(こ)が多いから、誰に声をかけるか? 迷うわ」

「暇そうにしてる娘(こ)を狙いましょう。ショッピングに来た連中とか」

「俺達、成功するのかな?」

「まあ、飯くらいは一緒に食べてくれるんとちゃいます?」

「じゃあ、あの2人組にする」



 僕達の初の広島ナンパがスタートした!







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る