第24話、初報酬の使い道
『ヴ〜!に"ゃー!!』『わん、わン!!』
「う、ん?まあまあ。ごめん、この子食事中だから、お誘いは嬉しいみたいだから、ちょっとこれでも食べて待ってて」
クロックタウンに戻って数日、私はギルドでの初仕事を終えて手にした報酬で、これまでの手厚いサポートに対するリリーへの感謝の気持ちをどう表すかを考えていた。
浅い雨が降った日、研究所に住み着いてるさび猫に餌をあげていたら、近くの雑貨屋さんのボーダーコリーが来た。
二匹の邪魔をしないようにその場を離れ、私は傘も差さずに街中を歩きながら、リリーへの贈り物に何が適しているのか、頭の中で思案を巡らせていた。
そのまま花屋の前を通り過ぎると、淡い黄色のマーガレットが目に留まる。ふと、リョウからもらったクッキーが頭に浮かんだ。程よく甘いクッキーは、その気持ちが嬉しかった。
「彼女は、何が好きだろう?」
自分の口から出た言葉に苦笑する。
彼女は仕事として付き合ってくれた。私のような異世界から来た人間を、彼女はあたたかく迎え、サポートしてくれた。
あの青いエーテルギアを身につけ、まるでこの世界の真理を体現するかのように生きる彼女に、どんな贈り物が相応しいのだろうか。
少し考えを巡らせた後、リリーに直接会って相談することに決めた。通信用タブレットで連絡すればカフェにいるという。
ナビに従い、カフェに着くと、外のテーブルでコーヒーカップを持ち上げるリリー青いエーテルギアが淡く輝いているのが見えた。
「待たせましたか?」
「いえいえ。橘さん、お疲れさまです。今日はどうしたのですか?」
リリーの言葉に促され、私はまず、これからの選択について真剣に考え始めていることを伝えた。
そして、彼女の青いエーテルギアについても尋ねてみた。
「以前お話しした通り、この青いエーテルギアは特別なもので、私にとっての生き方そのものです。ご興味があれば、エーテル工学の探求を進めるためにも、まずは高校に通っては如何でしょうか?」
「高校ですか?」
「はい。単位制の高校でまずはこの世界のことと、エーテル工学の基礎を学んでは如何でしょう。それにお友達とかがきっとできますよ」
確かに、私は研究所のスタッフや区役所、ギルドメンバーなどとしか交流をしていない。この世界に馴染むのに、学校は確かに良さそうだ。
「ありがとう」
微笑む彼女に感謝しながら、本題に入ろうと緊張してしまう。
「リリー、聞きたいことがあるんだ」
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