純愛ストーカー男がウォッチ女に捕まった後、自業自得
秋濃美月
第1話
☆彡
「あ、
私の名前は”りと”。
現在、公認心理師の勉強中だ。
辛い事も結構あるが、まあまあ頑張ってる方はある。
私の趣味は、今時趣味とも言えないだろうがインターネット。
snsで様々な形で人間関係を広げ、そこで知り合った男女とチャットするのが一番の勉強の息抜き。
そして実際問題、そこで見聞きした話が勉強の実践にすごく役立つ事もある。
日頃は、公認心理師の勉強をしていることは黙っているのだが、葉子は、性質がよくて妙にウマがあって、いつの間にか自分が夢に向かって勉強をしている事を話してしまっていた。
というのも、葉子は、学生時代から小説家になるという夢があり、勉強を怠らない努力家だったので、すごく私には理解しやすく、話しやすかったということもある。
葉子は、現在、在宅で文書入力の仕事をしながら、毎日コツコツ小説を書いている。
「絡まれ中っていうか、結局、立件することにしたわ。今までは子どもが可哀相でしなかったんだけど、流石にこれ以上は、生活の妨害されてる場合じゃない」
葉子は、チャット中で、話すよりも早く入力してくる。
クローズドチャットなのだが、他にも常連が2~3人いて、性別は不明だけどそれぞれ心配して葉子に声をかけてきた。
「大丈夫?」
「もう長いよね」
「ストーカーに十年以上絡まれだろ。体調、平気か?
そういう声に、葉子は絵文字を使いながら応えた。
「全然平気じゃない。特に女がキチガイすぎ」
「www」
「女を間違って男が変態ストーカーに成り下がったパターン。言ったじゃん。この女、実の子どもを産んだ後も、育児そっちのけで私にイヤガラセするのが生きがいで、現状続行中なんだってば。小学校に上がる子どもの母親が、ストーカー男の妄想につきあって、普通の主婦にリアルにネットにイヤガラセって、洒落になんね。子どもが可哀相だから、立件するわ」
ああ、そういうのもありなんだ。
私は、葉子のやつれているだろう顔の事を想像して、リアルで少しため息をついた。だが、ネットにはそんなことはおくびも出さず、ねぎらいの言葉をいくつかかける。
私が葉子と知り合った頃には、既に葉子は、ストーカーに追尾されていた。世の中、色々と事情はあるもので、その頃はストーカーが葉子の警備兵のように守っていたらしいのだ。
訳がわからん……最初はそう思っていたが、葉子から真剣な打ち明け話を聞いているうちに、ついつい、半可通の傾聴スキルが徒になって、色々聞いてしまったということはある。
私から見て、葉子は、その頃は本当にストーカーの「マモルくん」が好きなように見えた。本人、自覚していたかどうかはわからない。「マモルくん」の事を、警察から庇いたい、だが、自分がwebを通じて小説家になるためにも、「マモルくん」の行動を止めさせたいと思っていたようだった。
とにかく、「マモルくん」が前科一犯になるのはイヤだったらしい。氏素性も本当に知らんかった癖に。
「俺、ちょっと酒取ってくるわー」
「私も、ビール」
クローズドチャット常連の達が口々に声を上げて離席したので、葉子も同じ事を言った。
「今夜は私もちょっと飲んじゃおう。旦那、帰ってくるの遅いし」
そう。
葉子は既婚者。
既婚者につきまとったストーカーがマモルくん。
そして、ストーカー嫁が便宜上、「サクラちゃん」という事になるらしい。ストーカー嫁の本名は、葉子は知らない。
葉子に対して、「サクラちゃん」は本名を名乗りも知らなかったが、頻繁に、某漫画のヒロインの名前を出して威嚇してくるので、「サクラちゃん」と呼ぶ事にしているらしい。
漫画にまで迷惑かけるなよ、バカ女。
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