タンポポの綿毛
涼風岬
第1話
私は国道沿いの歩道を歩いている。ふと、目の前のランドセルを背負った小学生に目がとまる。近所に住んでいる顔馴染みの子だ。
街路樹の前にしゃがみ込んでいる。様子を見てみることにする。綿毛になったタンポポを眺めている。私も腰を落とし並んでそうする。
「こんにちは」
「あっ、こんにちは~」
一瞥すると直ぐに視線を綿毛に戻した。何度も首を傾げながら綿毛と睨めっこしている。暫くすると綿毛の茎を折り手に取った。私は突然の事に驚く。
「可哀想じゃないかな?」
「違うよ」
「どうして?」
「飛んでいっても車に轢かれて死んじゃうんだよ。轢かれなくても道の上では咲かないんだって。お母さんが言ってたよ」
「あっ、そっかぁ~」
「一緒に行きますか?」
「んっ? どこに?」
立ち上がると私の手を取り促す。私が立ち上がると引っ張られていく。小学校の校庭まで連れてこられた。先程とは打って変わって周辺は長閑のどかな風景であった。
「一緒に吹きますか?」
「あっ、そうさせてもらおうかな」
とは言ったものの、邪魔しては悪いと思い吹いた振りをしようと思う。
「じゃあ、しゃがんで下さい」
促された私は従う。すると、頬を寄せてきた。
「絶対に一緒に吹いて下さいね。大人の人が吹いたら遠くまで飛ぶから。いいですか?」
「あっ、うん」
「せ~のっ」
私たちは息を吹き掛ける。綿毛が風に乗り空高く上がっていく。
タンポポの綿毛 涼風岬 @suzukazeseifu
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