女児?女児!女児。
読破
第1話 女児。
まずい。まずい。まずい。
何がまずいって全部だ。全部。
つま先から頭のてっぺんまで全部まずい。
俺は健全な男子高校生だ。
この状況はまずい。
もし誰かに俺の頭の中が覗かれてるなら尚のことまずい。あ、覗かれてなくてもまずいか。
まぁ何がまずいのか結論から言おう。
俺、女児になっちゃった。
~~~~~
「はぁ……俺ぜってぇ赤点だわ。しかも数学。アイツの追試マジでだるいんよね〜」
「お前また点数低いと?てか数学俺が教えてやったやん?なんしとーと?」
学校からの帰り道、俺達はコンビニで適当に買った棒アイスを頬張りながら帰っていた。
「いや!教えてもらったとこは出来た!ただギリ40点届いてない感じするわ……」
「はぁ?お前それ意味ねぇやん。……まぁ追試がんばれ、分からんとこあったら教えるけん。」
ハルとは小学校からの長い付き合いになるがテストの時はだいたいテンションが低い。
まぁいっつも赤点だったら憂鬱にもなるか。
「はぁ……夏休み学校出らないけんし!ソラはいいよなぁ頭良くてさ!」
「やけん勉強手伝ってやったっちゃろ?まぁ追試も教えてやるけん。はよ終わらせて夏休み楽しもうや。」
「……しかも性格もいいし!イケメンやし!モテるし!もう俺と付き合って!惚れた!」
またハルが何か言い出した。
ハルは拗ねるといつも突拍子のないことを言い出す。
「まぁ性格も良いし、イケメンやし、モテるけど、そんな自分を卑下せんでええよ?ハルにも良いとこあるよ?ほら……あの……元気なとことか」
「あ!お前、今良いとこ探そうとして無かったけん適当言ったちゃろ!?慰めになってないし!自慢入っとるし!」
「まぁ元気出せって、このアイスも俺が奢ってやったんやけん。」
俺は食べ終わったアイスの棒をハルに見せてそう言う。ハルも食べ終わったようだ。
「まぁそうやけど……あ!当たりや!ラッキーってそんなのどうでもいいんよ!てか俺も彼女ほしい!」
「情緒不安定かよ!てか俺も彼女は居らんしな?モテるだけで。」
俺はそう言いながら自分のアイスの棒を見てみる。当たってなかった。うん。ちょい悲しい。
「そゆとこムカつく!性格良いのと相殺してプラマイゼロや!あ〜彼女ほしい!むしろ俺が女になって百合したい!」
「なに訳分からんこと言っとん?てか百合したいって……お前、そう言うとこやと俺は思うよ?モテん理由。」
そう言って俺は近くにあったゴミ捨て場にアイスの棒を投げ捨てる。入った。ちょい嬉しい。
「もういいし!俺アイス貰ってくるけん!待っとってや!」
「え?戻るん?待っとかないけんの?だる!」
ハルはアイスの棒を握りしめてさっきのコンビニに走って行った。アイツはとことん自由人だ。まぁそう言うとこもハルの良さだと思うが。
少し手持ち無沙汰になった俺は近くにあったバス停のベンチに座ってハルを待つ。座って待っていると先程は感じなかった汗がにじむ感覚が鮮明になり、少し嫌な感じだ。
俺は思考をそれから逸らすように違うことを考える。百合か。まぁ女性同士の恋愛も分からないことも無いが本当に現実にある事なのだろうか?
確かに男の俺からすると可愛い女の子がイチャイチャしているのを見るのは好きだが、同性愛というのがいまいちピンと来ない。
多様性の時代にーとかどうとか言われるんだろうけど、まぁ俺の感想だ許してくれ。それに否定してる訳じゃないしな。
俺は適当にそんな事を考えながらスマホで漫画を見る。あ、百合漫画でも見てみるか?いいなそれ。暇だし。
~~~~~
「ッ〜〜~……!!!」
百合良い!あぁ!同性愛いいわ!俺も女の子なりてぇわ!ハルに完全同意!可愛すぎだろ!まずどっちも女の子って所がいいわ!目の保養になるわ!世の中の腐女子もこんな感じで男を見てるんだろうか?確かにこれなら妄想してしまうかもな!いい!!!
俺は頭が沸騰しそうになりながらスマホの画面を凝視する。キュンキュンしすぎて暑いが気にしてられない。だって可愛すぎるんだもんよ。可愛いすぎて頭に血が上る感覚がする。
いや、てか可愛すぎだろ。
なんやねんこれ。同性愛ってこんなに良いものだったのか?もっと早く出とけばよかった!人生の7割ぐらい損してる気がする。今からでも、もっと百合の成分を摂取しないと……。
「てか暑いなぁ……」
汗のジトリとした感覚は消えて服も乾いてきたが暑さは当然引かない。何処か違うところに行って涼んでもいいが面倒くさい。それにハルをここで待ってなきゃ行けないしな。
「てか百合漫画もっと見たいし……」
俺はそう言いながらも画面をスクロールする手が止まらない。あぁこのシーンもいいなぁ!え!ちょっと過激すぎないか!?そんなところまで!?やべぇアッツ!!キマシタワー!!
「暑いなぁ!てかハル遅くね?」
……。
「まぁいいか。さて続き続き……てか暑すぎだろ?今日の気温何度だ?」
……。
「は?37度?45度の間違いだろ?」
……。
「はぁ……暑すぎ……。」
……。
「……暑いなぁ……?」
……。
「……あれ?体から力抜けて……?」
……。
「……いてっ……たおれ……」
……。
「やばっ……からだ……うごか……」
……。
「……ッ……」
やばい。まじやばい。
もう声も出ない。
ベンチに突っ伏して目がチカチカする。
え?熱中症ってやつ?
まずい。まずい。まずい。
これはまずいやつでは?
百合漫画見ててキュン死ってか?
笑い事じゃねえよ!
やべぇハル早く来てくれ!
あ……。
目がチカチカして……。
あ…………。
まじやばい……。
こ
れ
死
?
~~~~~
「……ぷは!やば!死ぬかと思った……?」
困惑して数秒の沈黙。
「あ、あ〜……なんか声高くね?」
これが俺の声?
それに……。
「ここ……どこや?草原?」
先程までの状況。
辺り一面のみどり。
そして、甲高い俺の声。
明らかに異常事態だ。
「あ、あ〜あ〜。マジで声高いんやけど。まるで女の子みたいに?」
そう言いながら俺はとりあえず、自分の手を見る。そこには小さな小さな綺麗な手。今まで一緒に歳を重ねてきた俺の手では無く、幾ばくの歳も行かない綺麗な女児のような他人の手があった。
「は?てか身長もちっさくね!?は?は?はぁ!?なんこれ!なんこれ!ヤバいって!」
辺りを見渡す、一面緑の草原。
ここには俺1人。
「お、おーけー!焦るな俺!こういう時こそ冷静にだ。」
大丈夫。
俺はクレーバーだ。
まだ慌てる時じゃない。
俺は数回深呼吸することで落ち着く。
あまりに突拍子のないことで焦ったがこういう時こそ状況確認だ。
「まず、ホントに女児になっとうかだ。」
いや、もう分かりきってるが。
てか100%そうだが。
姿を見て確認しないことには言いきれない。
たとえ、手がとても小さくて、声は高く、髪も肩くらいまで伸びてたとしても、確認しないと分からない。これぞシュレディンガーの猫だ。
げ、現実逃避じゃないぞ。
「でもどうやって姿を確認しようか。」
姿見とまでは行かなくても、何か反射して姿が映るものがあればいいんだが。
俺はもう一度じっくり辺りを見渡す。
川の音が聞こえる。俺の足は自然とその方向に向かっていた。
~~~~~
「いや!とお!歩いて体感30分以上やぞ!聞こえた時はこんなに遠くなかったはずやのに!」
俺はそう言いながら地面に伏せる。少し疲れた。目線の先には綺麗な川。姿はまだ見ない。
(心の準備がまだやけんな)
てかそう。この体は不便だ。
足は短いし、体力は無いし、口を開けてたら髪が口に入る、はっきり言って邪魔だ。
それにここまで多分3キロも歩いてないがこの体ではひいこら言いながら30分以上歩いてやっと着く。
不便すぎる。前は走って10分もかからなかったのに……。
さて……。
「……」
分かってる確認しないのかだろ?
……。
したくないんだよ!
だって認めたくないじゃん!
熱中症で倒れて女児になってるんだぞ!
そんなの今どきの漫画でもないわ!
てか俺、阿呆すぎる。
自分の体調くらい把握しろ!
「はぁ……。確認、するかぁ。」
俺はそう言いながら川辺へと近づく。
1歩2歩3歩。
もう見える位置には来た。
くそ。
見るしかないのか。
……。
「まぁ……分かりきっとったけどさ。おれ……女児になっとる。」
この日、俺 一花
~~~~~
あとがき (見ないでよし。)
はい。あとがきです。
主人公は一応博多弁のつもりで書いてます。
読みにくいところがあれば教えてください。
私は執筆スピードが遅いです。なので投稿は不定期になります。まぁ完結までは投げ出さないので気が向いたら覗きに来てください。
そして皆で百合を感じましょう!!!
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