先輩の愛車はべ〇ツだった!

崔 梨遙(再)

1話完結:1200字

 僕が30歳になる前、30代の会社の先輩がいた。先輩とは、コンビを組んで、ナンパに出かけたことがある。岡山にすんでいた頃のことだった。先輩の名は新谷さん。僕等には勝算があった。先輩の愛車がベ〇ツだったのだ。ベ〇ツを武器に、斬り込むことにした。といっても、岡山には大きな繁華街が無かったので、ゲームセンターに行った。ゲームセンターには多少、女の娘(こ)がいるからだ。


 女の娘(こ)2人組がいた。多分、20代の前半。クレーンゲームで苦戦していた。僕が先に声をかけた。


「ぬいぐるみ、取ってあげようか?」

「えー! いいんですか? ありがとうございます」

「任せてくれ」


 ポロ。


「えー!」

「任せてくれ」


 ポロ。


「取れてないじゃないですか」

「大丈夫、大丈夫」


「……」

「……」


「ほら、取れた」

「2000円も使ったじゃないですか?」

「幾ら使うとは言うてないやろ? 約束通り取れたんやから、これでええやろ?」

「まあ、そうですね、ありがとうございます」

「なあなあ、ベ〇ツに乗りたくない?」

「ベ〇ツ?」

「うん、クッションがフカフカやで。先輩のベ〇ツでドライブしようや」

「えー! どうしようかなぁ」

「なあ、頼むわ。またクレーンゲームでぬいぐるみ取ってあげるから」


 僕が女性Aと話している間、新谷さんは女性Bと話しているようだった。


「じゃあ、この巨大なぬいぐるみをとってくれたら、ドライブに行きます」

「よっしゃ、任せとけ! さあ、頑張ってください! 先輩!」

「俺か?」

「お願いします。僕には無理です」

「一緒にやろうぜ」

「わかりました、ほな、一緒に」


 奇跡的に? 4千円くらいで大物のぬいぐるみをゲット出来た。


「さあ、ドライブやで」

「でも、どこに連れて行かれるか? 怖いから」

「変なところに連れて行く奴は、クレーンゲームで6千円も使わへんわ」

「ほな、ファミレスでも行く? 安心だろ?」

「うーん、今日はお断りします-!」


 2人は逃げ去った。


「あらら」

「逃げられちゃいましたね、ははは」

「まあ、他にも女はいる!」


「なぁなぁ、ベ〇ツに乗らへん? 白いベ〇ツ」

「いや、色は関係無いだろ」

「乗りませーん!」


「君、ベ〇ツに乗ったことある?」

「無いです」

「ほな、ベ〇ツに乗ってドライブせえへん?」

「しませーん!」

「君、ベ〇ツに乗りたくないの?」

「興味無いです-!」



 深夜までかけて惨敗。僕達は先輩の部屋で反省会をした。もっとベ〇ツがパワーを発揮すると思ったのに、不発だったことはショックだった。女性に対しては、ベ〇ツは効果的ではないのだろうか? 意外だった。だが、僕達はめげない。次の手を考える。僕達はナンパ道の道半ばなのだ。まだまだ精進して、ナンパ道を極めなければならないのだ、恋人が出来るまでは。恋人が出来たらナンパなんかしないけれど。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

先輩の愛車はべ〇ツだった! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画