第2話 その父、洗濯する

 私の一日は、洗濯物から始まる。

基本的に妻は外で仕事しているため、私が家事をやっているためである。

もっとも、理由は別にあるけれど。


「さてと、今日も洗濯機を回そう」

一人暮らしの時は、全部まとめて洗ってたけど、結婚してからは白や色物でしっかりと分けるようになった。色移りしているの見ると、干すときに結構ショックだ。


 あとは、男性物と女性物で分けること。

まぁこの家に男性は私一人だから、結局は妻と娘分と私の分は別に洗っているってだけだけれど。


 これは昔、子供の性別が娘って判明した時に先輩旦那さんたちに聞いた知識だった。どうやら、年頃の娘っていうのはお父さんと一緒に洗濯されると嫌がるものらしい。

まぁわからなくはない。

むしろ自分が娘だとしても嫌かもしれない。私は娘からしたら、一番近くにいる男になる。

父親らしいことが出来ている自信は全くないので、こういった細かいところだけでも不快感を与えないようにしたい。

娘には、精神的にも健康に育ってほしいのだ。

そんなこと言ったら、娘の洗濯物を私が洗っているのもどうなんだという感じだが、これはどうやら娘本人から許可を取ってるらしい。



「あのさ、このまま私が洗濯していいのかな」


「ん?どゆこと」

アイスを食べながら妻が振り返る。


「いや、お父さんが娘の洗濯物触れるってキモくないかな…本人嫌がってくる年頃だったりしない…?」


「そういう気にしてんのがキモいわ」


「た、確かに…」


「まぁあなたは気にしすぎというか、被害妄想気味だと思うけどね。そこまで配慮すると逆に嫌ってるのかと思うよ」


「いやいやいや私はただ娘にできるだけ嫌われたくない一心で言ってるだけで嫌ってるなんてあるわけないというか」


「わかったわかった。ウチから聞いといてあげるから落ち着けって」


「マジですか!?お願いします…」


という妻との会話を思い出す。



妻は気にしすぎだといったが、こういったことは気にしすぎるほど気にしたほうが良いのだ。

思春期の娘はどこに地雷があるかわからず、常におびえて過ごしているといった先輩旦那さんのことを思い出す。

 

 ああいった普通のお父さんでさえ、悩んでいるのだ。さらに我が家ではお父さんの外見も情けないときている。終わりである。


 洗濯機のスイッチを押したら、朝ごはんに取り掛かろう。

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