賢者、いざゆく!



「ここが……新しい世界か。」


俺が目を開けると、そこは見渡す限り緑の大地が広がる美しい場所だった。青い空、澄んだ空気、そして遠くに見える巨大な街の城壁。これぞ異世界ファンタジーという景色だ。


「おお……いい感じじゃん。」


転生直後の俺は自然と笑みがこぼれる。しかも、今回は賢者という最強クラスの職業に加え、「スキル吸収」という便利すぎる能力まで付いている。楽する準備は万端だ。


俺は軽く手をかざしてみる。頭の中には、この世界で使える魔法やスキルの基本的な知識が流れ込んでいた。


「とりあえず試してみるか。ファイアボール!」


手のひらから放たれた火球は、目の前の草むらを燃やし尽くした。


「うお、これ簡単すぎない? 全然詠唱とかいらないじゃん。」


スキル吸収の力も試したいところだ。幸い近くに魔物がいるらしく、草むらから小さなスライムが出てきた。


「お、初モンスター。お手並み拝見といくか。」


スライムに近づき、軽く触れてみる。瞬間、体の中に「吸収」の感覚が広がり、スライムの特性である「柔軟化」がスキルとして追加された。


「へぇ、こんな感じなんだな。これなら強いやつから能力吸いまくれるじゃん。」


楽してレベリングできる未来を確信した俺。だが、次の瞬間、草むらの奥からは想像以上に巨大なモンスターが現れた。


「ちょ、デカすぎだろ!」


そのモンスターは熊のような体格に鋭い牙を持つ魔獣だった。スライムとはレベルが違う。


「いやいや、こんな序盤でボスキャラとか聞いてないって!」


逃げるか戦うか悩む俺。だが、賢者の知識がささやく。


「待てよ、楽するってことは、頭を使えばいいんだよな。」


俺は地面に手を当てて魔法を放つ。


「アーストラップ!」


足元に設置された魔法陣がモンスターを拘束。動きを封じられたところに、先ほど吸収したスライムの「柔軟化」で自分の体を素早く避けるように強化する。


「楽勝じゃん! ……いや、全然楽じゃなかったけど。」


こうして初めての実戦をなんとか切り抜けた俺だが、これから先の冒険はさらに波乱の予感がする。


「まあ、転生賢者たる俺には楽する権利がある。無理せずやっていこう。」


そうつぶやきながら、俺は目指すべき街へと歩き出した。



現時点のステータス

名前:リア(Ria)


職業:賢者

レベル:1 → 3

スキル:ファイアボール、アーストラップ、柔軟化

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る