第一章 あらたな人生
第2話 転生した?
真暗な空間。
白色とは真逆の景色にオレは気が付いた。軽かった身体が今度は重く感じる。耳からは羽ばたくような音や動物の声が聞こえる。
オレは生きているのか?
色が変わっただけで、オレは死んだままか?
何も分からない……。
背中と尻が冷たい。僅かに風が肌を通り抜けていくのが分かる。
ゆっくりと目を開ける。
どうやら頭を下に向けているようだ。寝ぼけているようで、まだぼやけている部分もある。
自分の脚部が最初に映る。学校の制服ではなく、和服を着ているようだった。それもそうか……異世界に転生したのだから。
頭が重いし、ひんやりと冷たい土の感触。オレは地面に座っているようだ。まだぼんやりとする意識の中、周辺を見回す。
どうやら、洞窟の中にいる。
外の光でぼんやりと明るく、オレは生き返ったと実感がようやく沸く。自分の手、足や服装を認識し、先ほどから遮っている黒いものをどかす。
……髪?
長い髪は下まで伸びていた。カツラか何かと思い、さっと前髪から軽く触る。
…………オレの髪だ。
この黒い物体は髪の毛。こんなに長い髪を生やしており、この女性が着ているような着物、そして胸の膨らみ。
まさかな……?
男のシンボルが無ければ、そういう事だ。そう納得しざるを得ないのだ。恐る恐るあそこへ手で触れると……。
やはりなかった。
何度も触れても、あの感触はなく、遂には目で確認してもなかったのだ。
ああ……まさかの女性に……。男だと思ってたのに。あの爺さんが一言も男とは言っていないのは思い出して分かったけども。まさかの女体化かぁ。罰当たりかもしれないが、神に恨みを持つとは思わなんだ。
はぁー……。
これで心が折れては異世界は生きていけない。何とか立ち上がって、今の状況を整理しよう。
洞窟、和服を着ているオレ、手元には刀、外は山か森の中であろう動物の声。遭難し、ここで元の人は命を落としたってところかな。何処かの町の中であれば、情報は簡単に聞き出せるが……いきなり難易度が高い。ここがゲームと同じファンタジー世界というなら、モンスターを倒しながら町を目指すのが今の目標だろう。戦い方も知らないガキが魔物に勝てると思うかよ。超能力や魔法があるとしても使い方も知らんし。やっぱ、これ詰んでるじゃん。
……ここで悩んでいても何も始まらない。最期でも悪足掻きでもして終えようじゃないかーハハハ。
この服装は恥ずかしいな。元よりも身長が高い気がするし、完全にこの身を受け入れるまでには時間が掛かりそうだわ。
出口から顔を出した瞬間、そこには見知らぬ女の子がいた。
金髪のショートヘア、黒色のワンピースを着ている。背を向けている為に顔はわからないが、少女が出入り口で座っていた。
よく見れば、傷を負っている。今にでも倒れそうなのを両腕で支えており、後ろからでも弱々しい印象を受ける。
「あの……大丈夫ですか?」
彼女はオレの声に反応し、振り返る。
水色のような瞳、十代の幼い顔に傷がある。
すぐには返事せず、オレの容姿を頭から足まで確認してからようやく口を開けた。
「クレナイ……なの?」
クレナイ。
恐らくはこの身体の元の名前。
もしかしたら、彼女は敵ではないかもしれない。うまく味方に付ければ、まずは情報なしは避けられる。
「その、オレは違う、みたいです。ええと」
先ずは何を話すべきか、言葉を詰まらせながら考える。疑問が多く、何を聞けばいいのかと頭がパニックになる。
少女は涙を浮かべながら、突如と抱きついてきた。
「分かってるよ……魔法が成功して良かった」
この展開に頭がついていけない。
彼女がオレという魂を呼び出してくれたのか?
魔法でどうにかしてくれたのか?
理解が間に合わない。
だけど、この子は敵ではない。
そう教えてくれているのだけは理解できた。
「あの、少し話……いいですか?」
「あっ、うん。そうだね。この中で話すよ」
洞窟の中に入り、先ほどまで座っていた場所に再び移動した。
話す前とはいえ、目に見えている傷がどうも気になる。
「傷……大丈夫?」
「大丈夫だよ、こんな傷ぐらいは治せるよ」
手の平から光が発した。
覆われた部分の傷は見る見るうちに癒えていき、元から何もなかったかのように回復していった。
これが魔法……。
ゲームやアニメで見たあのイメージと同じだ。
「なぁ、オレがこの身体に宿した理由とか、聞いてもいいか?」
「そうだね。先に自己紹介するよ。私はネヴィラ。この世界で十人しかいない魔女と呼ばれているの。随分前から魔法を極めながら旅を続けているよ。さっき言ってたクレナイという名は、鬼人の魔物で私の友達だったの。ただ、ある二人組に会ってしまったのが不運だった」
「……その二人にやられたのか?」
「長年生きていて、手も足も出なかった。あの冷徹な目と吸い込まれそうな闇に負けたんだ。兄妹だったんだけど、兄ひとりに私達は負けた。その後は逃げたんだけど、重傷のクレナイに治療をする魔力も残ってなかった。最期には私の無事だけを祈って命を落としてしまったんだ。そこで賭けに出たの。残りの魔力を全部使って、クレナイの想いを繋いでくれる人が、その身体に転生してくれたらと願いながらね」
「それで今に至る、と」
「うん……その、迷惑だったら無理に私に付き合う必要はないよ。転生魔法で強制的に君が宿ってくれたけど、君の意思は尊重する。暫く私は何もできないし……」
「……まあ、元々は一度は死んだ身だし、この世界の事も何も分からないしで頭がまだまだ整理が付いてない。ここで会えたのも何かの縁だ。宜しく頼むよ。えっと、ネヴィラさん」
「う、うん! ありがとう! 宜しくね。えっと、名前は?」
「元の名前は月宮悠って言うんだ」
「ユウ君……私が名づけすると魔力は強化できるけど付ける?」
名付けか。
同級生にこの格好で会うのも恥ずかしいんだよな……。
メリットもあるし、悪くない提案だ。
「いいぜ。さっき魔力がないって言っていたけど、共有される感じか?」
「そうだね、ユウ君と私の魔力が繋がって、片方にずっと送り続けるとかできるの。ユウ君は魔力がない代わりに『吸収』できるスキルあるから、共有した方が私の全快も早いって思ってね」
ん?
今、魔力がないって言われた?
「ちょっと待って。オレ、魔法使えるの?」
「え? 使えないよ。身体能力とスキルはいっぱいあってね。状態異常にも強い面はあったよ」
なんと……刀と拳で戦うタイプだったのね。
魔法も使ってみたかったなぁ。
まあ、うだうだと言っても仕方ねえ。
「そっかぁ。あ、名前を決めてほしいな」
「あ、そうだったね! ええと…………メイで! これも運命から取って付けた名前だよ」
悪くはないな。
「メイ、ね。気に入ったよ。宜しくな」
「うん、宜しくね」
「後はだ。腕慣らしに戦ってみたいんだけど、今、外に出ても大丈夫か?」
「危険視している兄妹はいないと思うから、大丈夫だよ。ここの森はスライムとかゴブリンがいるけど、練習になるかな」
「お、ちょうど序盤の場所でうってつけだな。少し出かけてくるよ」
「私は影に隠れてながら見守っているから、頑張ってね」
水に飛び込むように消えていった。
これも彼女の魔法なのか、と驚きと興味深く見てしまった。
クレナイさんの後継者として、異世界を冒険するぞ。
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