オレだけ転生。魔女と共に異世界へ
鳴壱(なりいち)
第1話 転移した?
高校生になり、早二か月が経とうとしていた。
いつもと変わらない学生生活。授業を受け、友達と話をするのが日課だ。教室の窓から外を眺めると、そろそろ季節が変わると感じる。
先生の声が子守り歌のように聞こえ、ついついうたた寝をしてしまう時だった。
「なんだこれ?」
「なんか光ってるよ!?」
ざわざわと騒ぎ出していた。
教室全体を囲むように赤く光り出しているそれは、漫画やアニメで見るあの魔法陣のようなものだった。
徐々に光が強くなっていき、辺りが何もかも白く包まれていく。人も景色も全てが形を捉えられなくなるまでに。
その場から逃げ出そうにも既に手遅れだった。
それは発動してしまう。
意識だけがハッキリしている。
だけど、身体の感覚がない。
目も開けているのはわかった。
あれからどれだけ経ったのかさえもわからないような空間。上下左右、全てが白色で塗り潰されている世界にオレはいる。
時間が経てば、何かが起きるかと思えば何も起こらない。
これは……どういう事だ?
「おーい、聞こえているかー?」
男の声が聞こえ、そちらに顔を向ける。
そこには杖を片手に持ち、白い髭を生やしたお爺さんがいた。
「あの……どちら様で?」
「おおー良かった。聞こえているようだな。儂は天国に住む人だ。まあ、つまりは神だな」
「…………え?」
「混乱するのも無理はないわな。まずは状況整理しようか、月宮悠クン」
「……オレの名前、知ってるんすか?」
「そりゃモチロンだよ。ひとりひとりの名前もよぉく知っている。まあ、ぶっちゃけると、キミは死んだんだよ」
「…………えぇ!? し、死んだってどういう事ですか!」
「魔法陣の使い手に問題があってだなぁ。全員分を転移できなかったんだ。それがキミだけだったんだけどね」
「なん……だと……? オレだけここにいる理由ってそういう……」
「まあ、これに儂も予想外でなぁ。なんせ、キミはまだまだ生きていると思っていたんだよ。こんな理不尽のまま、魂もあの世に行くのは嫌だろ?」
「うん」
「そこでだ。キミには二つの選択がある。新しい肉体で転移先に行くか、このままあの世に行くか。どちらがいい?」
「元の世界に戻るという選択は?」
「あるにはある。だけど、月宮悠という魂は完全に消え、新しい命として生まれる。キミの両親も、友人も、思い出もリセットされた状態で戻る。それを選ぶというのか?」
「それは嫌だ。あいつらを忘れたくねぇ。新しい肉体の情報というのはないのか?」
「んーあるにはあるが、どういう状態かは把握できんな。それでいいのであれば、転生を望むか?」
「……それで頼む。このまま死ぬなんて嫌だから」
「よしわかった。では、新しく生まれ変われよ。月宮悠クン」
何かに引っ張られる力に身体は吸い込まれていく。
爺さんは手を振っているのが見え、そのまま意識が黒色へと変わっていった。
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