第3話 『ドラゴンマガジン』の思い出

 KADOKAWAのラノベ雑誌『ドラゴンマガジン』が休刊になるそうです。まあ、雑誌も書店もつぶれまくる今のご時世では、しかたのないことでしょう。私自身、もう何十年も買っていませんし。


 しかし、この雑誌は創作者としての私の一部を形成する重要なパーツであることも事実です。それだけ読んできました。あ、本稿では作家や漫画家の先生方のお名前は敬称略で記載いたします。


 さすがに創刊号は知らないのですが、創刊3号のときに書店で偶然見かけて、田中芳樹『灼熱の竜騎兵レッド・ホット・ドラクーン』が連載開始というので興味を持って立ち読みし、そのまま購入したのが読み始めるきっかけです。まだロゴがメタリックな角張った感じで、イメージカラーが青、表紙はアイドルがファンタジー風コスプレをしてイメージキャラクターのミニドラゴン「ルーくん」を手に持っている写真を使っていた頃でした。出版元は角川書店ではなく、その子会社の富士見書房でしたね。今では本体に吸収合併されてますけど。


 それにしても、今なら、いやその頃から5年後だろうと、田中芳樹に月刊連載させるというのは無謀だろうと思ったんでしょうが、その頃の田中芳樹はまだ『銀英伝』ですら完結させてなかった新進気鋭の作家だったので、あそこまで遅筆だとは思ってませんでした(笑)。


 ところが、創刊3号には、その当時ですら無謀だろうと思う超寡作作家の月刊連載作品が載ってたんですね。幻の、火浦功『キャロル・ザ・ウェポン』です。そう、あの火浦功に月刊連載させるというのは、当時ですら無謀だろうと思ったのですが、実際に読んでみたら、更に衝撃的な事実が!


 何と、最後の最後で作者(火浦功)が「もう連載無理です、勘弁してください~」と連載を投げてしまって連載終了という衝撃のオチだったのです(笑)。それも、主人公キャロルが仲間のところにたどり着く前に(爆)。イラストレーターは美樹本晴彦だったのですが、呆れたようなキャラたちの真ん中で作者が土下座してるイラスト描いてたなあ(笑)。


 幻である理由は明白でしょう。ファンタジア文庫に収録されてませんから(笑)。結局グダグダで終わってしまった『灼熱の竜騎兵レッド・ホット・ドラクーン』なのですが、『キャロル・ザ・ウェポン』に比べたらファンタジア文庫で出版されるぐらいには続いただけ、まだマシでしょう。


 もっとも、ファンタジア文庫はまだ創刊されてなかったので、初期の連載作品にはファンタジア文庫未収録の幻の作品がまだあります。例えば、初期に結構力を入れていた『武蔵野妖精迎撃隊』(遊撃隊だったかもしれません)はイラストが確か山本貴嗣でしたね。あと『お嬢様デンジャー』はイラストが阿乱霊だった気がします。どっちもイラストレーターは覚えてるのに肝心の作家名の方を覚えてないんですが(爆)。こいつら、Wikiのドラゴンマガジンの項目の連載終了作品にも名前が載ってないという。


 同じく名前が載ってなかった初期連載漫画に『シンデレラファイブ』という美少女クルーの宇宙戦艦ものがあったのですが、こちらは漫画家名を覚えてないのに原作者が「みなみだそう」というのを覚えているのは、『月刊OUT』のライターの名前として南田操を覚えていたからでしょう。


 既に、のちに超長期連載となる名作、竹河聖『風の大陸』(イラストはいのまたむつみ)や、漫画では出渕裕『機神幻想ルーンマスカー』(これも結局グダグダで終わりましたが)や三田竜介『ドラゴンハーフ』なんかも既に始まってましたね。


 次号か、その次かは忘れましたが、ひかわ玲子『バセット英雄伝エルヴァーズ』の連載も始まりました。イラストが美樹本晴彦だったので『キャロル・ザ・ウェポン』の代原なんだろうなと当時から思ったものです(笑)。ただ、ひかわ玲子の作品は既に『エフェラ&ジリオラ』を読んでたので、新連載というのを見て期待してたのは覚えています。


 しかし、何より大きな影響を受けたのは、この雑誌でテーブルトークRPGを知ったことでしょう。


 実は、友人がパソコン誌『月刊コンプティーク』を読んでいて、その話を聞いていたので『ロードス島戦記』の大元がTRPGのリプレイだというのは知っていました。


 その世界観と共通する『ソードワールド』のTRPGを企画が『ドラゴンマガジン』の最初期の目玉だったんです。何と、読者参加企画で、アイデア募集をやっていたんですよ。


 『ロードス』の作者の水野良や、カクヨムでも作品を掲載されていた、故・山本弘もメインライターとして参加していましたね。山本弘のリプレイで、のちに『スチャラカ冒険隊』として知られるようになる作品も載っていました。この頃はまだルールが確定していなかったので、連載時には「精神力3倍消費」が「3回振り直し」ルールで書かれていたんですが、のちにドラゴンブックスで文庫本になったときは確定ルールの「達成値3点アップ」ルールに修正されていました。


 リプレイは第三部の清松みゆき『バブリーズ』まで連載されてたんですが、その後の第四部『へっぽこーず』はドラゴンブックスでの刊行になったので読んでなかったところ、本誌で特集があったのをきっかけに読み出したりしましたね。


 私がTRPGについて親しんだのは、結局この『ドラゴンマガジン』の影響が大きかったと言えるでしょう。


 小説についても、あの『スレイヤーズ』はファンタジア文庫で本編1巻が出る前に本誌で先にギャグ短編『すぺしゃる』を読んでいたように記憶しています。この、ファンタジア文庫で本編を展開してギャグ的な外伝短編を本誌で連載するという手法は、このあと『それゆけ! 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ』とか『フルメタル・パニック!』でも行われていましたね。特に『ヤマモト・ヨーコ』はタイトルで毛嫌いしてたのを、本誌の短編連載で中身を知って読むようになりました。


 そんな私ですが、本誌のラブコメ色が強くなってきた頃から読まない話が増えてきたんですよ。あかほりさとる『セイバーマリオネットJ』とか。そして、トドメをさしたのが都築俊彦『まぶらほ』でした。


 都築俊彦はファンタジア文庫で出した処女作『ライトセイバーズ』が面白かったので、その続きを期待していたら、本誌連載として出てきたのが全然違うラブコメ作品だったので失望したんですね。


 それで「ああ、もう読む価値無いな」と思って、買うのをやめたんですよ。Wikiによると連載開始が2000年8月号とあります。高校生のときに読み始めて、今の会社に就職した頃にやめたんですね。約12年間の読者でした。


 そうか、もう四半世紀も前のことになるんですね。ああ、何もかも皆懐かしい……(笑)。


 


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