第3話:いや、むしろ来てほしい。
「エッチいのはすぐなれます・・・それも看護の一環ですから・・・」
「エッチいのが苦手なら、全然露出なしのナース服に着替えて来ましょうか?」
「そうなるとスカートがスラックスになります」
「めっちゃ、つなんないと思いません?」
「いや・・・あの、僕エッチいの好きです、だからそのままでいいです」
売り言葉に買い言葉。
エッチいのが好きって・・・僕はなにを言ってるんだろう?
「一応、看護師免許も持ってるよ」
「ほんとに?・・・ならいいですけど・・・だけどさ」
「さっきも言いましたけど僕、間違えて違うサービスに登録したんじゃない
ですかね?」
「それは私には関係あ〜りません」
「来て欲しいって言われたから来ただけですけどぉ・・・」
「ああ、それは間違えたかもしれないのは僕の責任だから君は悪くないよね」
「やめます?・・・イヤなら私は帰ってもいいですけど」
(いや、いや、いや、間違えたとしても、こんな可愛い看護師さんもどきが
うちに来てくれたらそれだけで、めちゃ癒しになるし・・・つうかやっぱり
刺激が強すぎるよな)
「そういう意味で言ってるわけじゃないからね、むしろお願いしたいくらい
です、ティンクルさん」
「うん、まあそれはいいんですけど・・・実は私、今日がはじめてのご訪問
なんです」
「広大さんのところが初お仕事だから、すごく緊張してるの」
「初仕事?・・・緊張って・・・どこが?とてもそうは見えないけど」
「だって心臓ドキドキしてるんですよ?」
「心拍数めちゃ上がってるんです・・・触ってみます?・・・ほれ」
「じゃ〜ちょっと・・・あ、いや、いい・・・女性の胸なんか触れないよ、
そんなことしたらセクハラになっちゃうでしょ?」
「私、緊張するとお腹が痛くなるんです」
「トイレお借りしてもいいですか?」
「あ、どうぞ・・・トイレは玄関のすぐ横です」
あれで、どこが緊張してるんだか・・・。
ティンクルさんはお腹が痛いと行ってトイレに入って行った。
「あの〜話、戻りますけど・・・私でよかったらお世話させていただきますけど
どうします?」
「ああ、びっくりした」
「え、トイレに入ったんじゃないんですか?」
「あ、ごめんなさい・・・おしっこ漏れそうなんで・・・」
「早くトイレに行けばいいでしょ?・・・どうもズレてるな」
しばらくして、彼女はすっきりした顔でトイレから出てきた。
「はい、すっきりしました、お待たせ〜」
「お腹が痛いって言うから大のほうかと思いましたよ」
「大も小もです・・・お腹下げてました」
「普段は便秘ぎみなんですよ」
「そんなこと報告しなくていいから・・・」
「で、どうします?私でよかったらお世話させていただきますけど」
「もちろん、せっかく来てくれたんだし、このさい本物の訪問看護じゃ
なくてもいいからお世話して欲しいかも・・・いやむしろ来て欲しい」
「言っておきますけどエバーランドは本物の看護サービスじゃないにしても
私は本物の看護師ですからね・・・そのへん誤解しないでくださいね」
「はあ・・・もうそのへんは・・・エバーランドがもし風俗関係のお店
だったとしてもこの際、かまいません」
その可能性のほうが大きそうな気がするけど・・・。
「じゃ〜改めまして、私「
「これからよろしくお願いしますね、
彼女は前にじゃなく、少し首を横に傾げるようにお辞儀した。
「どうも・・・よろしく、
あのエバーランドの、まことしやかなキャッチコピーはなんなんだ。
あれじゃ騙されてもしょうがないじゃん、まあ訪問看護なんだからウソは
ついてないのかもしれないけど・・・。
ってことで、ティンクルさんは僕のお世話に来てくれることになった。
病気のメンテは不安が残るけど、なにもしなくても彼女が家の中にいてくれる
だけで部屋の空気感がいいふうにガラッと変わったのはたしかだった。
部屋の中に空気清浄機があるみたいにめちゃフレーバーな香りがして精神的に
癒される。
それで気づいた。
要は僕は体のメンテより安らぎや癒しが欲しかったのかなって。
ずっと遠ざかっていた異性の持つ柔らかさ温もりその雰囲気が欲しかったのかも
しれない。
いつの間にか心が乾いてたんだな・・・僕は心に潤いが欲しかったんだ。
男ってそんなもんなんだよね・・・だから彼女が欲しいって思うんだろうな。
そんな感覚をティンクルさんが気づかせてくれた。
もうそれだけで僕は立派に看護されてるじゃん。
彼女の存在は僕にとっては絶大すぎる癒し効果をもたらしてくれそうだった。
あのコスプレみたいなエッチいナース服も含めてね・・・。
だから今の僕は病気の心配よりも、これからのワクワクしかなかった。
つづく。
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