第3話 深森アンジェリカ
やっぱり、誰も助けてくなかった。
ランドセルを振り回している間も家の中から人が覗いていたのに、誰も出てきてはくれなかった。
わたしが、わたしとお母さんが『ガイジン』だから?
戦争で、ウクライナからお母さんと逃げてきた。日本はお父さんの国。でも日本での生活は辛い。
髪の色が変だとイジメられる。言葉を覚えても誰も友達になってくれない。ご飯が美味しくない。味噌も醤油も納豆も大嫌い。
ウクライナで戦っていたお父さんとは連絡がつかなくなった。
国からの支援だけでは足りなくて、お母さんは夜の仕事を始めた。お母さんはあまり笑わなくなった。
もう疲れちゃった。こんな世界で生きていても何も良いことなんて無い。もういいよね? もうお父さんのところにいこう、お母さん――
「――うおらあああああッッッ!」
ライオンのような唸り声がし、男の人が走ってきた。
男の人は自転車を大きな蜂にぶつけると、お母さんを抱え上げる。
「走れ、クソガキ!」
「は、はい!」
男の人は、すごいスピードで走る。背の高いお母さんを抱っこしているのに、わたしは追いつけなくなりそう。
走り方がすごく綺麗。チーターみたいに地面を蹴って、空を飛んでいるみたい。
胸の奥が、ジュウジュウした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます