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 こうしてわたしはさくら色のキミの、こうくんの悪女になることを条件に家に住まわせてもらうことになり、

 もう2週間以上経つけど、初めての気持ちの名前は未だに分からず、

 今もこうくんの家の居間で濡れた髪をドライヤーで乾かしてもらっている。


 洗った髪、こうくんのシャンプーの香りがまだ残ってるから、だだでさえ、恥ずかしいのに。


こうくん、自分で乾かせるから」


「だめ、俺がきよらを悪女にしたんだし。これくらいさせてよ」 


 こうくんはこうやっていつもわたしを甘やかす。


 家は一戸建てで広くて、わたしからしたら豪邸で住まわせてもらっていること自体が夢みたいなのに、


 朝起きたら、一緒に歯磨きをして、

 見つめ合って朝ご飯、

 昼のお弁当は手作りで屋上でこっそり食べて、


 午後の授業中、コソコソ声で「悪女別れろ」とか聞こえてきても、

『今日は何食べたい?』ってこうくんからメールが届いて、

 隣のクラスも今、授業中だよね? コソッと送ってきてくれたのかな? って、

 一瞬で嬉しくて幸せな気持ちでいっぱいになったり、


 夜もわたしの好きな甘いパスタ作ってくれて、

 寝る時は別々で、部屋は隣同士だけど、

 一人で寝れない時は、わたしの部屋に来て、ベット近くの椅子に座って一緒に寝てくれる。


 だけど、このままじゃ嫌われて捨てられてしまう。


 甘やかされてばかりではいられない。



こうくん、今日の夜はわたしに晩ご飯作らせて」


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