Episode 21 違和感



 ワープポイントを抜け、第50階層に到着した俺は何か『場』に違和感を感じた。


 ワープポイントを抜けると、縦長の長方形の部屋が広がっている。右手側にはたくさんの食料が置かれている。左手側には大きめのベッドがある。

部屋の最奥には次の階層に進むためのワープポイントがある。


 他の階層と違い、休憩所は迷路のようにはなっていないし、部屋の全貌はワープポイントを抜けた時点で全て見えているはず、だった。


 そして今も見えているはず。


 だが、どこか違和感がある。


 別になにか魔物のような敵がいるような感じではない。ただ何かが引っかかる。


 いままでの休憩所には無かった『何か』がある気がするのだ。


 探していた手がかりがこの階層にあるのかもしれないと考え、慎重に部屋を観察する。



 肉やフルーツなどの食べ物があるところに変わりはない。ベッドも同様だ。


 部屋の最奥に見える次の階層に向かうワープポイントも違和感は無い。


「勘違いか・・・」


 いや待て。

だいたいアニメや漫画だと「勘違いか」って言った時はだいたい何かあるときだ。


 もう一回目を凝らして探してみよう。



 それから数分が経って、俺がそろそろ諦めようかと思った時。


「・・・・・・あ」


 見つけた。



 部屋の最奥にあるワープポイントのさらに奥の壁に、何か切れ込みのようなものがあることに。


 俺は駆け出しその切れ込みに向かう。


「・・・・・・これは」



 切れ込みは壁の一部を長方形に切るかのようにつながっていた。


 俺は剣の腹で軽くそこを叩く。

 すると、乾いた音が返ってくる。


 間違いない、この奥にはまだ部屋がある。


 そう確信した俺はこの切れ込みがドアのようになっていることを利用し、押したり引いたりするが壁は動かない。



「強硬手段しかないな」


 無理やりあげると決めた俺は竜剣を構え、切れ込みの内側に斬撃を与える。



 ーーキーン


 金属をぶつけたときのような音が響く。


 弾かれた。



 もう少し強くしないといけないか。


 今度は全力で、斬ることだけに集中をして、

斬撃を放った。


 今度は上手く剣が通り、ドーンと大きな音を立てて壁の一部が崩れ去る。


 剣で斬ったところを中心に、切れ込みに沿って壁には長方形の穴ができる。



「隠し部屋か、テンション上がるな」


 壁の先には一辺1メートルほどの、小さい部屋があった。

 そしてその中心には赤く光る魔法陣。


 これまでの青白く光る魔法陣をもつワープポイントとは違う。


 赤く光った魔法陣はどこか不気味な感じを醸し出している。


 

 罠か、否か。


 乗るか、否か。



「当然、乗る」


 俺は両足を魔法陣の中に入れた。


 赤い魔法陣は一際強い光を発し、

俺の体は赤い光に包まれた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る