Episode 15 vs. ミノタウロス
「なるほど、こういうわけか」
第9階層のワープポイントを踏み、
第10階層までやってきた俺は目の前に広がる光景に笑みが溢れる。
空腹の心配をしていた俺だったが、それは杞憂だったことがわかり、最高の気分である。
そう、それはなぜなら、第10階層は休憩所のようになっていたからである。
ここの階層には生い茂る果物や、肉や魚が大量に置かれている。肉や魚はすでに串に刺されて調理済みのものが置いてあるが・・・・これは安全なのか?
まあこのダンジョンを作った初代竜王がものすごい魔法使いだったのだろう。なんたって初代竜王だからな。
ここの階層はいままでのところと違って割と狭めで、天井が高い。
そう、天井が高いのだ!
食料があり、寝床もあり、魔物もおらず、明るくて生活しやすく、そして天井が高い!
もうずっとここに居たいと思ってしまうほどの高待遇な階層ではあるが、いつかは先に進まなければならない。
とはいえ今はまだ休憩の時間だ。
1日中動き続けたせいで体にも随分と疲労が溜まっている。できるなら明日丸々休みたいとも思ってしまうが、それはやめておこう。
「美味っ!」
そこにあった骨つき肉にかぶりつくとあったかく肉汁が溢れ出した。味付けも絶妙で次の一口を唆る。
どこかの高級レストランの出来立ての料理なんじゃないかと思うほどだ。
用意されていた植物を積み重ねられて出来ていたベッドは見た目に合わず良い寝心地だった。
やっぱ良いね、久しぶりのゆっくりした暮らしも。
そうして俺はたくさん晩ご飯を食べてゆっくり寝た。
翌日、早朝
もう朝だと思う。たぶん。
ダンジョン内ということで太陽の光がないので時間感覚がだんだん狂ってくるが、体が起きたということはたぶん朝だろう。
今日から第11階層に入るが、そろそろ強めの敵も出てきて欲しいと思うところだ。
たぶん俺がこっちに来てから1番苦戦したのは、
シェネルを閉じ込めていた球体を破ることだっただろう。
せっかく新しい剣もあるんだし、
ここは一つ、ミノタウロスみたいなのでも出てきてくればいいなとおもっている。
それから攻略を進めて、数時間が経った。
ちょうど俺が第18階層のワープポイントを踏んで、第19階層に着いた時。
ついに現れた。手応えのありそうな魔物が。
2本の足で体を支え、牛のような顔。
そして顔の左右斜め上から生えている角。
右手に抱えた巨大な棍棒は、まさに地獄の門番のような雰囲気を醸し出している。
そう、ミノタウロスだ。
ついに現れた。
ミノタウロスは棍棒を構え、戦闘態勢に入る。
俺もミノタウロスを斬るために、一歩後ろに下がり、体制を整える。
剣を居合のように左腰に構える。
鞘はないから形だけだ。
呼吸を整え、全神経を右腕に集中させる。
空気の流れも感じ取れるくらいに、でもいらないものは脳に入れない。
腰を低く落とし、足は軽く浮かせる。
一瞬でも早く動き出せるように。
全てはミノタウロスを斬るために。
こちらの集中を感じ取ったのかミノタウロスは一瞬たじろいだが、本質は馬鹿な魔物なようだ。
何も考えず棍棒を振り回しながら近づいてくる。
ブモー、そんなアホみたいな鳴き声が、やつの最後の言葉になることはやつは分かっていない。
俺は、構えて溜めた、力を一筋の剣に乗せる。
刃とミノタウロスが交差する一点に全ての力を、
細く、鋭く、硬く!
ーーズルッ
手応えを感じてから数秒後、
背後からそんな音が聞こえた気がした。
よし、ミノタウロスは瞬殺できた。
居合の構えはかっこいいけど難しいな。
それにもっと強い敵との高速での戦いになれば今回みたいにゆっくり溜めをつくる時間はない。
要改善だな。
まあとりあえずはミノタウロス戦の勝利を喜ぼう。
「よしっ!」
そうして、俺は2度目の休憩所、第20階層へと進んだ。
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