Episode 9 新たな剣を求めて




 B級冒険者ムーノを下し、俺がA冒険者になった次の日。


 シェネルは俺を呼び出して、言った。


「今日は買い物をするぞ」


 いきなり?

別に反対はしないけど


「いいけど、いきなりどうしたんだ?」

「昨日の戦闘で武器を酷使してたし、

その鈍じゃこの先まともに戦えないぞ」


 うーん。たしかにシェネルの言う通りだ。


 今使っている剣は、追放された時に慈悲で貰った金で買ったものだし。

いつまでもあいつらのおかげで戦えると思うとムシャクシャするな。


 よし、買い換えるか。


 気持ちの問題だけでなく、

シェネルの言った通りこれはぶっちゃけどこにでもある普通の剣だ。


 これから俺が強くなって、さらに強い敵と戦うことになったらこの剣のままではダメだろう。


「俺は良い剣とかあんまり分かんないから、シェネルが選んでくれるか?」


 そう、俺はこの前までただの男子高校生だったんだ。

 本物の剣なんて触ったことはもちろん、見たことすらなかったと思う。


「む、妾が剣を選ぶのはいいが……」

「どうかしたのか?」


 実はシェネルも剣には詳しくないとかだろうか。


「オーダーメイドの方が良いんじゃないかと思ってな。そっちのほうが良い剣を買えるだろうし、イブキの体に合わせて作った方が今後も使いやすい」


 なるほど。

シェネルが言うならそうしてみるか。


「いろいろ教えてくれて助かるよ。じゃあ、武器屋に行こうか」

「ああ」



 俺たちがやってきたのはキルス王都一の、いや世界一の鍛冶職人がやっていることで有名な武器屋。


 店に入ると、店内にいろいろな剣が飾られており、レディメイドのものですらかなりの高クオリティであることが伺える。


 ここの店は超有名店だが、超超超高級店なので人の出入りは少ない。恐らくここで武器を買うのは全く金に困らない上級貴族や、王族などの剣を嗜みで見る者。

 それか、SS級やSSS級冒険者のような、

十分に収入があり、かつここの剣を買う必要のある人間だろう。



 余談だが実は、SS級冒険者のほうが、そこらの中級貴族より金を持っていた!なんて話はよくある。

 世界に3人しかいないSSS級冒険者に関しては、

普通に国王の個人資産くらいは持っているかもしれない。


 中級貴族と、国王。全くレベルの違う存在だ。

 それと同様、SS級とSSS級も、全くレベルの違う存在だということ。



 話は戻るが、この店に出入りするのはそういう階層の人間だということ。

最近ちょっとだけ有名なA級冒険者なんかが来る場所ではない。


 A級冒険者も、普通に街中にいたら、スゲ〜とはなるような存在ではあるが、ここの店は特別だ。



 まあだから何が言いたいかって話をすると、

店主が堅い人だった場合、A級ごときが来るんじゃねえ!って言われる可能性も考えてはいたのだ。


 だが、その考慮は今実際に店主と話してみて、

ただの杞憂だったことがわかった。



「よし、これで体長の採寸は終わった。

あとはどんな剣にしたいか、だけだ。

何か希望はあるか?」


 剣のサイズを決めるためにした採寸がちょうど終わったところだった。


 剣の希望、ということだが、どんなのが良いんだろう。

 色とか、デザインとかかなぁ。


 ならやっぱここは・・・


「カッコいいので!」

「ふっ、ふふふ、はっはははは!」


 急にめっちゃ笑い始めた。


 ガキっぽいなと思われたのだろうか。


「どうしたんですか?」

「いや、やっぱそうだよな。

剣はカッコよくないとな、俺と思ってることが全く同じだったもんで笑っちまったんだ」


 良かったぁ〜、馬鹿にされたとかじゃなくて。


 剣はカッコよくなきゃな、その言葉から店主の人の良さというか、一流の職人でありながらも無邪気な心を忘れない人という感じがして。


「じゃあ、剣を打ってくる。

1週間後にまた来てくれ、その頃には出来上がっていると思う」


 そう言って早速店主が工場に行こうとしたところをシェネルが引き止めた。


「なあ店主のおっさん、剣の芯にはこれを使ってくれ」


 そう言いながら、シェネルはポケットから一つの銀色の鱗のようなものを取り出した。


「む、これは・・・いいだろう、やってみる」


 そう言って、今度こそ店主は工場に入って行った。



 店を出て、俺は最初にシェネルに問うた。


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