偶然が二度目なら…㉑

 普段はクールな表情と紳士的な態度なのに、時々別人になったかのように優艶な表情になる彼。

 そのギャップに、まだ知らない一面があるんじゃないか?と心が惹きつけられる。


「ご迷惑をお掛けするわけにもいきませんし、私も借りを作らない派なので」


 彼が女性に手練れた人ならば、こちらは演技のプロとして受けて立つ。

 彼の挑発を軽くあしらい、湊はサラッと返答した。


「OK。じゃあ、先に注文しておこうか」

「はい」


 路側帯でハザードランプを点灯させた彼は、携帯電話でデリバリーを検索し始めた。


「食べたい物選んで」


***


 虎ノ門にあるタワーマンションの地下駐車場に到着した。

 さすが検事。仕事場の検察庁が目と鼻の先にある。


 車を降りて彼の後を追うと、スッと目の前に手が差し出された。


「荷物持つよ?」

「あ、大丈夫です。重く無いですから」

「遠慮しなくていいのに」


 彼も同じショップの袋を手にしている。やはりあの時、モール内のショップで見かけたのは彼だったようだ。

 着ていた服が紙袋に収められていて、もし満員のエレベーターだったら……?

『変装カップル』だと勘違いされそう。

部屋へと向かうエレベーター内で、無意識にそんなことを考えてしまった。


「今日も水玉柄なんだね」

「え?……あ、はい」


 ショップの紙袋の中に収まっている私服から、水玉柄のスカートが覗いている。

思わず彼が手にしている紙袋に視線が向く。だけど、見える範囲に水玉柄は見当たらない。

 紙袋の底の方にあるのかしら……?

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