偶然が二度目なら…⑯
「分かりました。そういう事でしたら、これで失礼します!」
「ご自分に合う、良い人見つけて下さい」
「フンッ」
完全にノックアウトされた見合い相手は、物凄い形相で帰って行った。
「んっんッ」
「あ、悪い」
腕を緩め、彼女を解放する。
すると、さっきまで見合い相手が座っていた席に腰を下ろした彼女はサングラスをずらし、ウインクした。
やっぱり。救世主は来栖 湊だ。
「何か頼む?」
「ううん、外でマネージャー待たせてるから」
「よくここが分かったね」
「フフッ、たまたまこのモールでイベントがあって、見かけたから」
「偶然にしては凄いな」
「助けて貰った御礼よ」
「マジで助かった」
「お役に立てたようで何より」
くすっと微笑んだ彼女は顎のラインで揃えられた髪をそっと耳に掛け、頬杖をついた。
「お腹空きません?」
「空いたな」
「今日はもう仕事無いので、ご飯でもどうですか?」
「え?」
「お嫌でしたら、無理にとは……」
「あ、いや、そういう意味じゃなくて」
ド派手なカラーの服は目立ちすぎる。
見合い相手に肩透かしさせようとわざとチョイスしたのだが、さすがにカフェの雰囲気には不釣り合い……だよな。
「とりあえず、出ようか」
「……ですね」
周りの視線が突き刺さる。
スタイルの良い彼女は、ド派手なカラーの服もカッコよく着こなし、彼女だけみたらモデルのようにも思えるほどで。
「ねぇ、あの人、……来栖 湊じゃない?」
「え、どこ?」
「ほら、あそこのカップルの女性、みーなだよ」
ヤバい。バレたかも。
念のために買っておいたキャップを彼女に被せ、彼女の腕を掴み店を足早に出た。
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