偶然が二度目なら…⑬

「すみません、これ下さい。で、タグも取って貰えます?着て帰るので」

「あ、はい、畏まりました」

「ごめんなさい。急いで貰えますか?」

「はいっ」


 焦らせてごめんなさい。けど、緊急事態なんです。

 心の中で店員さんに手を合わせ、支払いを素早く済ませ、タグが取り終わった服を手にして試着室へと。

 ショーのモデルで培った早着替え。こんな所で発揮するとは思いもしなかったけれど……。


「すみません、有難うございました」

「あ、はい。……え?」


 着ていた服を頂いた紙袋に押し込め、試着室を飛び出た私は、困惑する店員さんを横目に颯爽とその場を後にする。


 試着室に入った時はキャラメルブラウンのロングの髪だったのに、出て来た人物はスモーキーピンクカラーの髪をした人なのだから、戸惑って当たり前。

 変身すると分かってたら驚かなかっただろう。髪の長さも全然違うため、完全にフリーズしていた。


 足下まで余念がない。

 服装に合わせて靴まで買った私は、カフェ目指してダッシュした。


***


「山ちゃん」

「……え」

「私よ」


 サングラスをほんの少しずらし、山ちゃんにウインクする。


「みーなっ」

「シッ」


 口元に人差し指を当て、不敵に微笑む。


「どうしたんですか?その格好……」

「今からミッションこなすから、店から出て来たら少し離れてついて来て」

「はい?」

「いい?これは緊急非常事態の救出ミッションだから」

「えぇ~何言ってるんですか~?」

「いざ、出動!」

「えっ、ちょっ……」


 ショップの入口から少し離れた所にいた山ちゃんの肩を軽く叩き、着ていた服が入っている紙袋を山ちゃんに押し付けた。

 

 ピアノのBGMが流れる店内。大理石調の床を軽快に歩く。――今、行くわ!

 堂々と闊歩する私へ視線が1人2人と増える中、同じビビットカラーを纏う人物の元へと。

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