偶然が二度目なら…⑦

 2時間半の射撃練習を終えると、銃のグリップが当たっていた肩口に鈍痛が走る。

それと、普段使いなれない下脇腹に筋肉痛のような痛みも。


「お疲れ様でした」

「体解してゆっくり休んでね」

「ありがとうございます」


 練習が辛くても、弱音は吐けない。やると決めた以上、役を疎かには出来ないもの。とことん自分を追い詰めて、やれるだけのことはやる。

 女優として、新境地を切り拓く……そう決めている。


 湊は次の仕事現場に向かうため、車に乗り込んだ。


***


「もう少し長めの方がいいかな」

「このブーツより、そっちの型の方が合いそうね」

「ん、その方がいいかも」


 スタイリスト2人が、用意された衣装をもとにシーン別の組み合わせを決めている。

 マネキンと化した私は、言われるままに衣装に着替え、何ポーズか簡単な写真を撮り、再び着替えてポージング。それを延々と繰り返す。


 2時間ほどの衣装合わせを終え、次はヘアスタイルとカラーを決める予定だ。

映画監督からの指示書をもとに、湊は用意されたカラーのウィッグ被る。


 『普段はヘアサロンで働く美容師』という設定の役柄なので、個性的なヘアスタイルが求めらるらしく、長さはもちろんのこと、今の髪色のキラャメルブラウンのカラーも一新しないとならない。


 今までの役でブロンドや白髪はしたことあるけど、さすがにイラスト(指示書)のようなピンクやグリーンアッシュ系は染めたことがない。

 これまでの役どころが綺麗系・清楚系など王道の役ばかりだったから。


「とりあえず、第一候補はグリーンアッシュかな。第二でシルバーブルー、第三がピンクアッシュって所かな」

「じゃあとりあえず、今日の所はスモーキーピンクにしてみます?次の打ち合わせもすぐあるし、戻すのはその時にすればいいですしね」

「そうだね」


 プロのヘアスタイリスト2人が、物凄い速さで準備してゆく。

 湊は言われるがままに椅子に座り、目を閉じた。

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