イケメン検事の一途な愛
蓮条
偶然は突然に
偶然は突然に➀
「
「あ、悪ぃ。まだ仕事が残ってるから戻らないと」
「マジか。そういえば、お前飲んでなかったもんな。柾、帰るってぇ~」
「えぇ~、
「悪い、また今度な」
桜が咲き始めた3月下旬。都内の四つ星の某ホテルで今日、大学時代からの同級生カップルが挙式をし、19時から35階のスカイラウンジを貸切っての披露宴が行われた。
平日(金曜日)の結婚式とあって、挙式自体は親族のみ。夕食を兼ねた披露宴に呼ばれたのだ。
既に酒が回っている友人らが、『仕事なんてなんとかなるだろ』と言いながら、強制連行とばかりに肩に手を回して来たのを軽くかわした。
二次会を断った俺、
披露宴がお開きとなり、二次会の会場へと移動が促される中、俺は友人らに挨拶して、一足先に会場を後にした。
この手の付き合いが嫌いなわけじゃない。どちらかと言えば、交友関係は広い方だ。検事という職種柄、仕事を理由にすれば、大概この手の集まりからは早々に離脱出来る。
今日は朝から小雨が降り続いていて、こんな雨の日は一人でゆっくりと過ごしたい、ただそれだけ。
金曜日の21時を回り、ホテル内はさすがに宿泊客も多く、幾つかあるエレベーターはひっきりなしに稼働している。
1~2分ほど待ち、漸く来たエレベーターに乗り込み【B2】を押す。扉が閉まると、緩やかに降下し始めた。
僅かな浮遊感を感じながら、ゆったりとしたピアノの音色(BGM)に耳を傾ける。
検事という職業は一年中仕事に追われるが、年度末の今は特に忙殺され、ゆっくりと音楽を堪能する余裕すらない。
壁を背にして凭れかかり、ネクタイの結び目をほんの少し緩めた、その時。ピンポーンという停止音が鳴り響き、25階でエレベーターが停止した。
何人乗るのか分からないためため角へと移動し、乗るであろう利用客と視線が合わないように顔を伏せる。
すると、ゆっくりと開いたドアの隙間から、声を荒らげる男女の会話が聴こえて来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます