幼馴染の配信手伝ったら何か……何か、うん。
黒奏白歌
第1話 お願いします!!ホラーゲームやってください!!
「お願いします!!私の代わりにホラーゲームやってください!!」
やあ、突然幼馴染に自室に連行されて目の前で頭を下げられて困惑しているところだ。
俺の名前は
ただの高校生である。
「大丈夫!!プレイだけやってくれればいいから!!配信での反応は私がすればいいから!!お願いします!!」
「いやアウトだろ」
「セーフだよ!!いいの、Vtuberだから中身入れ替わったって気付かれないから!!所詮個人だからね!!えっへん!!」
「でもお前登録者1万人くらいまではいただろ……んじゃ、借りたい漫画借りたしもう帰る」
「待ってお願い一生のお願い!!」
「それ今回で五十八回目だな」
「えっ……数えてたの?キモッ」
「帰る」
「待ってごめんなさい!!ごめんなさいごめんなさい!!」
頭を床に擦り付けて懇願している相手の名前は
氏名が喧嘩しているような名前の女子。
俺の幼馴染であり、現在個人勢のVtuberとして活動中。
高校へは出席日数ギリギリしか行っていない。
先日はその件で呼び出しを食らったほど。
完全な問題児だ。
「……はあ。詳しく話せ」
「え!?いいの!?」
「話聞いてからださっさと話せ」
そんな問題児を甘やかす俺も問題児なのかもしれない。
雪奈から書き出した話によると発端は一週間前の配信での出来事。
ママ?とやらの繋がりで同業者とコラボする事になり、更に言えば折角ならホラーゲームで勝負しようと言われたらしい。
具体的には叫んだ回数をカウントして多かった方が負け、というシンプルなルール。
問題となったのが、
「お前ホラー全般苦手だろうが……」
目の前にいる幼馴染はホラーにとことん耐性が無い。
昔一緒にホラー映画を見ていた時も途中で逃げ出した。
結局最後まで俺が一人で見る、という何のための集まりか分からなくなった。
ちなみにホラー映画を見ようと誘ってきたのもこの幼馴染である。
「う……で、でも、折角コラボしてもらえるなら、って……」
「挙句助けを当日に頼むとかさ……アホか」
「ぐはっ」
「しかも代わりに操作って……発想が子供か」
「ぐふ」
目の前で吐血し始めた幼馴染は放っておいて。
カレンダーと時計をチラリと見る。
どちらにも月奈のVtuberとしての立ち絵がデカデカと印刷されている。
グッズは出ていないはずだし、自作か。
それは一旦スルーして考える。
今の時間は午後6時。
今日は金曜日、そして配信の開始時間は午後10時から日を跨いで深夜まで。
つまり、夜更かしをする必要がある。
親にも幼馴染の家に泊まる、と言わなければならない。
元々俺もその配信を視聴するつもりだったのに。
急遽配信側に参加しろ、なんて滅茶苦茶だ。
「……やっぱやめだ。今更無理だ」
「お金払いm」
「いくらだ?」
月奈に詰め寄る。
ホラーゲームを代わりにやるだけで金が貰える。
そんな魅力的なことがあるだろうか。
「ひっ……一万円で……」
「三」
「お願い、二万円で……」
「……日給で二万か……まあいい。今から仮眠とる。飯はこっちで食うからおばさん達に上手いこと言っといてくれ」
「今日お母さん達いないの……」
「なら今日の飯は出前か?」
「れ、冷蔵庫にお母さん達が頼んでくれた安いお寿司入ってる……ちょうど二人分……」
へえ、今夜は寿司か。
時計に目を向け、スマホで両親に今日は雪奈の家に泊まる、とメールを打って二時間のアラームをセット。
普段雪奈が使っているであろうベッドの上で横になる。
「え、ちょっ、何してるの!?」
「二時間仮眠とる。悪いがこっちは生粋の真面目野郎だ。夜更かし苦手なんだよ。先に寝させろ」
「あ……そういうことか」
「8時になったら飯食って、後は配信まで準備でいいな?俺のことは気にせず今のうちにやることやっとけ」
「う、うん」
「先に言っておくが」
一瞬だけ雪奈を見る。
「悪戯したらお前の個人情報ばら撒く。やるなら覚悟しておけ」
「なんで分かるの?」
「幼馴染だからだ」
さっさと目を閉じる。
意外とすぐに眠ることが出来た。
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