出来ないことを、悩み続けても変わらない

星咲 紗和(ほしざき さわ)

第1部:出来ないことを認める勇気

私たちは誰しも「出来ないこと」に直面する瞬間があります。それは時に、自分の能力や努力を否定されたように感じ、深い無力感や自己嫌悪を引き起こすものです。

たとえば、学校で苦手な科目に苦しむときや、職場で求められるスキルに追いつけないとき、あるいは日常生活の中で他人が簡単にこなすことが自分には難しく感じるとき。そんな瞬間に心が折れそうになるのは、誰でも経験することです。


しかし、ここで大事なのは、「出来ないこと」を無理に克服しようとする前に、それを正直に認めることです。出来ないことを認めるのは、決して敗北ではありません。それは、自分の限界を冷静に見極めるための大切な第一歩です。


出来ないことに執着しない


人はなぜ「出来ないこと」にこれほど囚われるのでしょうか?

その背景には、社会や周囲からのプレッシャーがあります。「出来て当たり前」「出来ないのは努力不足」という暗黙の期待に押しつぶされ、自分を責め続けるのです。特に真面目な人ほど、「やらなければならない」という義務感に縛られがちです。


でも、思い出してください。すべての人が万能である必要はありません。誰にでも得意不得意があり、出来ないことを受け入れることで、自分のエネルギーを本当に必要なことに注ぐ余裕が生まれるのです。


たとえば、私は数字に弱く、計算を早く正確にこなすことが苦手です。かつてそのことを隠そうと必死になり、問題が解けるまで何時間もかけたことがありました。しかし、その時間が他の作業に使えたら、どれだけ効率的だったでしょうか。苦手なことを無理に克服しようとするより、「これが出来ない」という事実を受け入れ、別の手段を探すほうがよほど建設的だったと、今になって思います。


自分を解放するために


出来ないことを認めることは、自分を責める行為ではなく、自分を解放する行為です。「出来ない」という事実を正面から受け止めたとき、初めて「じゃあどうする?」と前向きに考える余裕が生まれます。


もし出来ないことを責め続けるばかりなら、私たちはその場所に留まり続けるしかありません。認める勇気は、「今ここ」を脱出し、新しい場所へ向かう切符のようなものです。


出来ないことを受け入れるのは怖いことではありません。それは、より自分らしい道を見つけるための最初の一歩なのです。立ち止まることを恐れず、まずはその事実と向き合う勇気を持ちましょう。

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