盗撮署長

あべせい

盗撮署長



「見えますよね。この交通標識。一時停止板といいます」

「一時停止はしましたが……」

「いいえ、確認できませんでした」

「しかし、キミね、近くにいたのなら、ドライバーから顔が見えるところまで出てきて、確認すべきじゃないか」

「それはできません。署の交通課のマニュアルは、そのようにはなっていません」

「キミ、ノルマがあるから、隠れて取り締まりをしているンじゃないの」

「そのようなノルマは、ありません。例え、あっても、言えません」

「キミ、あまり見ない顔だけれど、ことしの新入り?」

「新入り?! なに言っておられるンだか。わたしは、若く見えますが、警察官を拝命して5年のプチ・ベテランです」

「ここ、赤塚署の管内だよね」

「残念でした、この信号から向こうは成増署です。赤塚署はあっち」

「成増署か。ミーぼうは、こんな取り締まり方はしないな」

「ミーぼう、って?」

「こっちの話。ひょっとして、署長が代わったから、こんな取り締まりをやっているンじゃないの」

 ギクッ。

「聞いているよ。本庁から飛ばされてきた、署長だろう。確か、部下のスカートの中を携帯で盗撮した、って。本当は内部でもみ消すンだけれど、被害を受けた女性警察官が記者クラブに訴えたことから、記事にしないかわり、左遷になった、って。違った?」

「あなた、いったいだれ? どうして、そんな内部情報を知っているの?」

「ぼくは、奈良一角。ならず不動産の社員だ」

「奈良一角さん? 聞いたことがないわ」

「あの署長のおかげで、成増署管内はしばらく、検挙率が落ちる」

「どうして?」

「当たり前だろう。こんな取り締まりをしていたら、住民の協力は得られない。聞き込みに行っても、まともに相手されない」

「そっか」

「キミは成増署の交通課だからいいけれど、刑事課はトバッちりを食らう」

「うちの刑事課は元々評判が悪いし……」

「ついでに、盗撮署長のもう1つの噂、聞いている?」

「知らない。わたし、交通課でも、先月六本木署から転任してきたばかりだから。みんなに馴染めなくて。きょうも、ここにはもう一人来るはずだったンだけれど」

「それじゃ仕方ないか。盗撮署長がいま狙っているターゲットだけれど……」

「あのエッチ署長、まだ懲りてないの」

「懲りるどころか、本人は左遷なんて思っていない。武者修行くらいにしか考えていないそうだ。本庁に戻ったら、警視正に昇格できると勝手に周りに吹聴している。東大出のキャリアにも、困ったもンだ」

「そのターゲットって?」

「山中さくら」

 ゲェッ!

「まさかッ。キミが、さくらさん?」

「そういえば、あのとき……」

「盗撮署長は美形狙いか。キミには盾になってくれる人はいるの?」

「まだ、来て1ヵ月だから……」

「赤塚署の交通課を知っている?」

「赤塚の交通課の方とは、この前女子会をやって、隣接署どうし、これからも親睦を深めあおうと、乾杯しました」

「話は聞いている。その中に、桜民都と鹿野花実がいたと思うンだけれど」

「桜さんは同じさくらつながりで、印象が強く、仲良しになれました」

「彼女がミーぼうだよ。ぼくの、いや、いい。やめておこう。もう一人の鹿野花実は通称、ハナちゃん、ぼくの先輩、志賀丸尾の恋人だよ」

「聞きました。花実さんは、交通課から刑事課に異動した異色の存在ですってね。いまは警視庁始まって以来の白バイ刑事として、交通課、刑事課のパイプ役にもなっているって」

「だから、交通課にも刑事課にも顔を出している」

「バカ署長の噂の出所はどこなンですか?」

「うちの会社の得意先に、印刷会社があるンだけれど、そこの部長が、新年度の受注がらみで挨拶に行ったら、盗撮署長がキミの名前を出して、けしからんことを言っていたそうだ。志賀先輩がその部長から、直接聞いた話だ」

「けしからんこと、ですか」

「ミーぼうとハナちゃんがどの程度、力になれるかわからないけれど、ミーぼうには伝えておく」

「ありがとう。奈良さん」

「みんな、ぼくのことを一角と呼ぶよ」

「じゃ、一角さん、これからも、よろしくお願いします」


 車の中。

「ミーぼう、機器のチェックはいいかい?」

 助手席から。

「バッチシよ、一角さん」

 そう言って、ショルダーバッグを上から軽くたたく。

「ほら、来たよ」

「どこに?」

「あの、コインパーキングの発券機のカゲだ」

「あの男性が成増署の署長なの。制帽をあんな風に阿弥陀に被って。ヘンなの」

「これから月に1回だけ、自ら街頭に出て交通違反の取り締まりをやるンだって。成増署のさくらさんが知らせてくれたよ」

「そう。さくらちゃん、たいへんよね。早めに退治したほうが、世のため、女のためよね」

「そうだよ。ミーぼう、きょうのシナリオは頭に入っている?」

「もち、バッチシ! 囮捜査は趣味じゃないけど、さくらちゃんのため、やるっきゃないッ! 一角さん、赤いネクタイ、すてきね。あなた、赤がとっても、よく似合うわ」

「ミーぼうの私服だって、すてきだよ。アイボリーのスーツのライン。さっきからぼくの脳天に突き刺さっている。じゃ、行くよ!」

 車を発進させる。


「お巡りさん、ちょっと」

 一角、車から降りて、署長を呼び止めた。

「キミ、こんなところに車を停めて、どういうつもりだ」

「この向かいのスーパーで買い物している間、見ていてください。お願いします」

「キミ、気は確かか。この道路標識が見えないのか?」

「駐車禁止でしょう。でも、助手席に、妹が乗っています。いいンでしょう?」

「まァ、いいが。それなら、本官に『見ていて』とは、どういうことだ」

「あなた、お巡りさんでしょう。偽警官じゃないでしょう?」

 警察手帳を取りだし、

「これが偽物というのか!」

「ヘェー、本物なんだ。だったら、妹が脚をケガして、動けないのがわかるでしょう」

 車内を覗き、

「妹さん……脚、足……スカート……」

 助手席の窓を開け、ニッコリして、

「お巡りさん、こんにちは。よろしくお願いします」

「こちらこそ。この方、あなたのお兄さん、ですか?」

「兄です。不出来な兄ですが、妹思いの兄です」

「あまりお顔が似ておられないから。似ていないほうがいい場合もありますから、いいのですが……」

「お巡りさん、すぐ戻ってきますから、妹をよろしく」

 一角、立ち去る。

 署長、見送ってから、車の助手席に、

「おケガって、どうされたのですか?」

「兄の暴力なンです」

「いま買い物に行かれたお兄さんがあなたにケガをさせたのですか?」

「はい……お酒が入るとひとが変わって……」

「DVは取り締まりの対象です。あなた、お名前は?」

「取り調べですか? わたし、兄を訴えるつもりはありません」

「それはいけない。そうした態度が、DVをエスカレートさせるのです。いけません。いかン! 私が直接、捜査します」

「失礼ですが、あなたは?」

「成増署の署長をしております、大山琴司です」

「署長さんですか。なおさらダメです。お断りします」

「あなた、署長の力をご存知ないようですね。本庁では捜査3課の課長をしていたンですよ。捜査3課、ってご存知ですか?」

 ミーぼう、首を横に振る。

 大山、その仕草に刺激され、

「おいくつですか? 19才、20才?」

「いいえ、22です」

 ンなわけ、ないでしょうが。

「若く見えますね。いや、本当にお若い。しかも、私のタイプ……でッす」

「さくら、お待たせ」

「お兄さん、早かったのね」

「あなた、お名前、さくらさんとおっしゃるのですか」

「そうですが。それが何か?」

「いや、さくらという名前の女性は、美形が多い、私がごく親しくさせてもらっている女性の名もさくら……、姿もよく似ている。これは、何かの符合なのかもしれない」

「お巡りさん、ありがとうございます。妹がお世話になって」

「お兄さん、この方、お巡りさんではなくて、署長さんだって。もっとよくお礼を言って」

「そうなンですか。署長さんが、直接街頭に出て、取り締まりですか。成増署は違うなア」

「上に立つ者は部下を指導するためにも、現場をよく知る必要がありますから」

「それで、お兄さん、あったの?」

「ダメだ。このスーパーは。ほかをあたるしかない……」

「何を探しておられるンですか?」

「サポーター。妹が足をケガしたので、足首を固定するサポーターを買いたいンですが。足首用というのは、なかなかないみたいで」

「それなら、いいところを知っています」

「ぼくは、仕事があって、これからすぐに車を出さないと。さくら、悪いが、1人で行ってくれないか」

「いいわ。お兄さん。署長さんに教えてもらって、買ってくる」

 ミーぼう、車から降り、

「ねッ、松葉杖がなくても歩けるでしょう。平気よ。そのカローラ、古いンだから、スピードには気をつけて」

「わかっているよ。署長さん、さくらをよろしく」

 一角、車を発進させた。

 大山、見送り、

「さくらさん、お買い物にご一緒したいンですが……」

「署長さん、とんでもない。場所だけ教えていただければ、ひとりで参ります」

「待ってください。彼女は何をしているのか」

 大山、携帯をとりだし、番号をプッシュする。

「山中くんか。いま、どこだ?」

 携帯の声。

「署長、すいません。いま、駅前の交差点を、信号無視して通過した車があったので、違反キップを切っているところです。すぐにすみます。あなたね、そんな古ぼけたカローラでスピード出して、どういうつもりッ!」

「山中くん。だれと話しているンだ」

「ですから、カローラのドライバーと」

「どんなドライバーだ?」

「ですから、赤いネクタイを締めた、憎らしいほど、いい男」

「赤いネクタイ、カローラ!」

「署長さん。それ、兄です」

 大山、頷き、携帯に。

「オイ、山中くん。そのドライバーはいいンだ。キップは切らないで、すぐにキミの持ち場に来なさい。これは署長命令だ! さくらさん、いま、私の代わりが来ますから。すぐです。そうすれば、私がご案内します。そのバッグ、重くないですか」

「いいえ」

「そうだ。いまのうちに、さくらさんの足首の写真を撮らせてください。サポーターを探すとき、参考にしますから」

「足首の写真ですか。恥ずかしい、です」

「何が恥ずかしいンですか。こんなにかわいい足なのに。すぐにすみます。私がしゃがんで、携帯をこう、包帯が巻かれているあなたの足首に向けて、シャッターを切る。もう1回、さらにもう1回、念のために、もう1回、おまけにもう1回、なんだか、ほかでもシャッター音がするようだが……いいか、重ねておまけにもう1回、またまたもう1回、もう1つおまけに……」

 この間、背後から、シャッター音がかぶさっているが、大山は全く気づいていない。

「署長! お待たせしました。署長、何をなさっておられるンですか! 女性の足元にしゃがンだりして」

 大山、振り返り、

「誤解するな。私は、こちらの女性が足首を痛めておられるから、治療の参考に患部を撮影していたところだ。さくらさん、行きましょうか」

「署長。わたしとどこに行くのですか?」

「キミじゃない。キミは、山中さくらだろう。こちらは、さくらさんだ」

「私、姓が桜といいます。よろしくお願いします」

 大山、つぶやく。

「さっき、お兄さんはさくらと呼んでいたが……」

「いいえ、こちらこそ。さくらつながりですね。署長は、大切なご用事がおありでしょう。さくらさんのお伴はわたしがお受けしますが」

「余計なことをいうな……そうだ。さくらクン、キミも一緒に来るか。女性のものを買うとなると、男の私では何かと不都合があるかもな……よしッ、さくらクン、彼女と一緒に、私について来なさい」

「取り締まりはどうします? 今月は強化月間とうかがっていますが」

「きょうはいい。1日くらい、何とでもなる。そこの路地に車が停めてある。それへ、乗ってくれ」

「署長、パトカーですよ。いいんですか」

「公用だ。公用で使うのに、なんの遠慮がいるンだ」

「では、さくらさん、後部座席に、2人で乗りましょう」

「なんだ、助手席は空か

 大山、運転席に乗り、

「では、発進するゾ!」


「署長、どちらに行かれるンですか」

「わからないかな。山中クン」

「署長さん。この道は、254に出ますね。この方向には、ドラッグストアはなかったと思いますが」

「さくらさん、少し寄り道させてください。すぐにすみます」

「はァ」

「着きました。パトは地下の車庫に入れますから、しばらくそのままで」

「署長、ここは本署じゃないですか」

「署長さん。わたし、取り調べを受けるのでしょうか」

「どうでしょうか。さァ、降りて。5階の署長室まで。地下からエレベータで行きます。山中クン、途中の階に停まっても、だれも中に入れないようにするンだ。いいね」

「はい」

「くれぐれも署員には気付かれないように。さくらさんの将来にかかわりますから」

「将来ですか……」

「5階です。署長室は、さくらさん、突き当たりです」

「署長さん、ごめんなさい。その前に、お手洗いを拝借させてください」

「いいでしょう。山中クン、一緒に行って、署長室まで間違いなくお連れして」

「はい」


 ドアをノック。

「山中さくら、入ります」

「遅かったな」

 さくら、ミーぼうを案内して、

「さくらさん、どうぞ、中へ」

「失礼します」

「さくらさん、そちらに掛けてください」

「署長、いまお茶の用意をしてきます」

「そうだな」

 山中さくら、ドアの外へ。

 大山、向かい側に腰かけ、

「きょうはいろいろ勉強させていただきました」

「なんでしょうか」

「キミはいったい、どこのだれなんだ。私に近付いた目的は、何だ?」

「わたしは、桜です」

「桜、何というンだ。下の名前は?」

「桜民都(さくらみんと)です」

「どうしてウソをついた!」

「ウソですか?」

「ケガをしたといっただろう。しかし、キミの、包帯を巻いた左の足首はケガなんかしてない。丈夫そのものだよ」

「どうしておわかりになるのですか?」

「私はね。学生時代、整骨院でアルバイトをしていたことがあって、ケガをしているかどうかくらい、包帯の上からでも、わかるンだよ。それに、キミは車から降りるとき、包帯をしている左足から降りて、平気な顔をしていた」

「……」

 ノック音に続いて、山中さくらがトレイにコーヒーを載せて現れる。

「失礼します」

「どうだ。まいったかね。キャリア組の署長だから、ロクでもないだろうとタカをくくっていたのだろうが、ダテに国家公務員1種試験に合格しているわけじゃない。キャリアを甘くみると、そのかわいい顔が泣きをみることになるよ」

「……」

「うちの山中さくらが、いい例だよ」

「エッ?」

「山中クン、こちらのさくらさんに、話してみるか」

「署長、おっしゃっている意味がよくわかりませんが」

「キミね。昨晩のことを忘れたというつもりか」

「わたしを赤塚ホテルにお誘いになったことでしょうか。それとも、奥さまがご実家にお帰りになっているので、自宅に来るようにと強くお誘いになったことでしょうか」

「キミ! 私はそんなことは言っちゃいない。私が言ったのは、署長の指示に従わないと、退職するまで1日も欠かさず、交差点に立って交通違反の取り締まりをさせられるということだ。キミは『はい、わかりました』と言ったよね」

「お誘いをお断りして、きょうから退職するまで、交差点勤務をする覚悟でいますとお答えしました。但し、署長のお誘いについては、マスコミに公表する覚悟もできています」

「キミ、山中クン、それはかわいくないだろう。第一、証拠がないよ。キミを誘ったという証拠が!」

「署長さん、お話中、恐れ入りますが」

「さくらさん、キミの話はあとにしよう」

「しかし、証拠とおっしゃったので。いま、お見せします」

 ミーぼう、左足首の包帯を外す。

「キミ、何をするつもりだ」

「署長さん、ご推察の通り、この足首はケガしているわけではありません。包帯はあくまでも、デジタル機器を忍び込ませるためのものです」

 包帯の中から、極小のカメラレンズと発信機が現れる。

「キミ、そ、それは何ダ!」

「カメラと発信機です。署長さんが、私の足首を撮影さなっていたごようすを、このカメラで撮影しています。ニヤニヤと笑っておられるお顔がバッチシ映っています。撮影した映像は、このバッグの中で録画しています。大事な証拠ですが、ご覧にいれましょうか」

「署長は、そのときさくらさんの足首だけを撮っておられたわけではありません」

 山中さくら、携帯をとりだし、

「わたしはこの携帯で、署長の携帯がさくらさんのスカートの中にもカメラレンズを向けておられたようすを、しっかり押さえさせていただきました。さくらさん、ごめんなさい」

「いいの、さくらちゃんがいつもこのデバガメ署長にされていたことだもの」

「キミたち、いったい私をどうするつもりだ。ここは警視庁赤塚署の署長室だ」

「署長、署長のプライベート携帯には、さくらちゃんを撮った盗撮映像があります。それをまず削除してください」

「あァ、待ってくれ」

 大山、上着のポケットからとりだし、

「これだ。いま、削除……」

 山中さくらが、それを素早くとりあげる。

「な、なにをするんだ!」

「署長、これはマル赤マークが付いている赤塚署の公務用携帯です。これにも、一般市民の盗撮映像は多少あるでしょうが、署長がさくらちゃんを狙ったのは、ピンク色の個人携帯です。早く出してください」

「待ってくれ。個人携帯はパトカーに置いてきた」

「パトカーのどこですか!」

「運転席の下だ。あのパトカーは署長専用だから」

「待って」

 山中さくら(携帯をかける。

「見つかった? 運転席の下を見て……」

「だれと話をしているンだ」

「あったの? ピンク色の携帯よ。よかった! それは大切な証拠品だから。それと、通報は予定通り、直ちにお願いします」

「パトカーの中を捜すって、だれだ。それは犯罪だ」

「カギをかけない、署長がバカなンよ」

「証拠品を捜してくれたのは兄です。兄はもちろんウソですが、わたしが兄にもなって欲しい思っている大切な人、恋人です。さっき、トイレに行ったのは、打ち合わせのためです。ここに連れて来られたのは予定外でしたから」

「キミの兄と言っていたあの男が、パトカーを尾行してきたのか」

「当然でしょう。エロ署長がたった1人で女性2人を連行する、って異常事態ですから。それから、あと1分で、ここに主だった署員が駆けつけます」

「どうしてだ。私を助けるためにか?」

「さくらちゃんの恋人が、だれもいないはずの署長室で、署員と民間人の女性2人が、正体不明の性犯罪者に監禁されていると、2分前に通報しています」

「ここに、署員が来る、ってか!」

「足音が聞こえませんか」

「さくらクン、連中が来たらどうするつもりだ」

「正直に話します。この携帯の映像を見せて。署長がきょう交通取り締まりと称して、何をなさっていたのか。それでも理解されなければ、押収した署長の個人携帯の映像を提出するだけです」

「待てッー!」

「署長! 拳銃を抜いて、どうなさるおつもりですか」

「わからないか」

「わたしたちを撃ち殺しますか!」

「そんな無駄なことはしない」

「ご自分をお撃ちになりますか」

「そんな恐ろしいことは、もっとできない」

「それじゃ、どうするおつもりですか」

「しばらく使えそうもないから、手入れをしておく」

                (了)

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盗撮署長 あべせい @abesei

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