STORY1 古崎 リリカ

第2話

古崎こざき リリカ・16歳の1ページ】





「フルサキ〜、どこ見てんだ、集中しろ〜」



またか。



「先生、私は古崎コザキです。いい加減覚えてください」


「悪い悪い、去年までその漢字でフルサキって生徒がいたから抜けなくてな」



絶対ウソだ。あれは揶揄からかってる。



彼は新見にいみ 慎弥しんや。私のクラスの副担任で、生物を受け持っている。


高校2年生の私からすると30歳なんておじさんだけど、さっぱりした見た目と親しみやすい性格のおかげか、女子だけでなく男子からも人気がある。



そして、左手に輝いているのは……

結婚指輪だ。



それを横目に見ながら、いつもの掛け合いが始まる。



「去年って言っても、新見先生、この学校来てから半年経つじゃないですか」


「そうだったか?30にもなると時が過ぎるのが早くてな、俺の記憶スピードが現実の時間に追いつかないんだよ」


「そしたら先生、認知症まっしぐらですね。私は介護しませんよ」


「……誰も君に頼んでない」


「突っ込むところそこですか?」


「いいから手を動かせ、口じゃなくて」

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