ダンジョン・クリエイターズ

たてわき

第1話

 放課後の教室、二人きり。

 夕日が差し込む中、僕とシズネさんはのんびりとゲームについておしゃべりしていた……はずだった。


「ローグライクでしょ!」


「RPGだ!」

 

 声を荒げる僕とシズネさん。

 お互いがこんなに熱くなったのはこの前、人気のお菓子『トリュフの山』と『キャビアの海』、どっちが美味しいかで意見が割れた時以来だ。

 僕はもちろん、トリュフの山派である。

 

「大体レン君はゲームについて何も知らないだろう? クリエイター的な目線がないからRPGの面白さに気づけないんだ!」


「シズネさんだって普通のゲーマーでしょ? クリエイター的な視点なんて持ってないでしょ!」


「私は! あ……いや、なんでもない」


「言いたいことがあるならはっきり言った方が良いよ? それとこの際だから言うけど、キャビアの海はあんまり美味しくないと思います!」


「キャビアの海の話は今、関係ないだろう!」


 ガラガラガラ。

 扉の開く音。


「お前らうるせぇ! 廊下まで声が響いてんぞ! 早く帰れ!」


「「はい」」


 担任の田中先生に怒られ、僕たちは停戦した。


「あと雪乃! 進路希望の紙早く出せよ! 残りはお前だけだぞ!」


「あ、はい」


 進路。

 早々と教室から去った田中先生と、ニヤニヤしているシズネさん。

 進路、どうしよう。


「レン君レン君。もしかして進路決まってないのかい?」

 

 ずいぶんと嬉しそうに話すシズネさん。

  

「くっ! シズネさんは?」


「決まっているとも」

 

「そ、そうなんだ。僕はまあ、進学かな」


 自分の口からポロリと出た進学という言葉。

 なんだろう。

 なんかモヤモヤする。

 僕は将来何がしたいんだろう?


「ふぅん、進学か」


 嬉しそうな顔から一転、顎に手を当てて何やら考えるポーズをし始めたシズネさん。


「じゃあ私も進学する」


「はい?」


「私はそろそろ帰る。ではレン君、また明日」


「え、ちょ、ま」


 スタスタスタ。

 シズネさんが教室を出ていく。

 一人ぼっちになる僕。

 えっと、うん。

 進路どうしよう。


「はあ。とりあえずあそこ、寄ってくか」


 僕は教室を出た。

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