ティアドロップ

@rui-turuta

章タイトル未設定

第1話

ジリリリッ

目覚ましの音が部屋に鳴り響いた。 

「んんっ」

片目を開けて、目覚まし時計に手を伸ばした福田華は、ベルを止めると、また眠りに落ちた。

すると、隣に寝ていた丸田祐也が、そっとベッドから出て、シャツを着た。それから、ズボンを履いてネクタイを結ぶと、スーツケースを持って静かに部屋を出ていった。

ピピッ、ピピッ、ピピッ。

一時間後、違う目覚まし時計が鳴った。

華は急いでベルを止めると、起き上がってベッドの隣を見た。

「あちゃーっ。またやっちゃった」

華は、掌で額を叩いた。

「祐也、ごめんなさい。今日こそ早起きして朝ごはん作ろうと思っていたのに」

華は既に、もぬけの殻になっているベッドの横に向かって、両手を合わせた。

華は、枕元に置いてあるスマホを取ると、祐也に電話した。

「もしもし、祐也?今日は朝ごはん、作れなくてごめんなさい」

華が申し訳なさそうに言った。

「今日はって、いつもだろ。華は、目覚まし鳴ったって、起きたことないじゃないか」

祐也が、怒ったように強い口調で言った。

「次は必ず」

華が言いかけたのを遮って、

「もう、期待してないから」

と言って、祐也は電話を切った。

「祐也、祐也っ」

華の声が天井にぶつかって、部屋中に響いていた。

「やっぱ、昨夜、飲み過ぎたよね」

華は、昨夜の事を思い出して、深く反省していた。

華は飲み過ぎると、記憶が無くなる事が時々あった。

昨日は、会社の飲み会で生ビールを中ジョッキで5杯飲んだあと、祐也を呼び出して二人でスナックに行き、カラオケを歌いながら水割りを3杯は飲んだ。それから、部屋の机の上に転がっているビールと酎ハイの空き缶から察するに、帰ってからこの部屋で飲んだに違いない。

かろうじて、下着は着けているが、服は着ていない。

やったのか?やってないのか?

祐也とは付き合って一年になる。

今日初めてそういう関係になった訳でもないので、やっていても、やっていなくても大した問題ではない。

お互い、30歳が目の前に近づいていた。

週末しか会えないが、会えばいつも最終的にはホテルに行く事になる。

最近は、祐也にアパートまで送ってもらって、一度部屋に入れてから、飲んだあと華の部屋に来ることが多くなった。いっそのこと、もう一緒に住んだらどうかという雰囲気になりつつある。それでも、祐也は何故か煮えきらず、中々プロポーズはしてくれない。

実家の母親からは、結婚はまだかと催促の電話がちょくちょく来る。

華もそろそろ子供がほしいと思い始めていた。

今日は土曜日で、仕事は休み。

「ん?そうだ。祐也、今日から長崎に出張だって言ってた」

華は、少しずつ二日酔いの頭で、昨夜のやり取りを思い出していた。

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