第43話 甲陽鎮撫隊

 甲陽鎮撫隊こうようちんぶたいは、慶応4年(1868年)に新選組が旧幕府から甲府鎮撫を命ぜられた際の名称である。


 そもそもの発端は、鳥羽・伏見の戦いに敗れて江戸に戻った新選組の近藤勇が徳川慶喜に甲府城支配を一任してもらうよう願い出たことだった。その時期について永倉新八は「江戸到着早々」としており、その意図については「甲州城を自分の力で手に入れここに慶喜を移さうとする計画を立ててゐた」としている。また、当時、陸軍総裁(1月23日から2月25日まで。同日、陸軍総裁のお役御免を申し出て認められるものの、新たに軍事取扱を命じられているので、引き続き軍事部門の責任者だったことには変わりない)の要職にあった勝海舟は明治17年に編んだ『解難録』で「伏見の変一敗して皆東帰し近藤土方其徒を率ゐ帰り再戦を乞ひ大に其徒を集む」として近藤らが「再戦」を目論んでいたとした上で甲府出兵についても「陽に恭順を表し陰に一戦を含み去て甲府に行く」と新政府軍との「一戦」を期してのものだったという見方を示している。


 ただし、こうした勝の近藤らにすべての責任を押し付けるような言い草には疑問を呈する向きもある。石井孝は『維新の内乱』で「徳川政権の陸軍総裁勝が近藤・土方・古屋らの脱走を公認したのは、厄介払いの政策からでたものとされているが、兵士や兵器まで供給し、あるいは職名を与え任地まで指定したのは、念が入りすぎている。そこで勝の脱走公認政策は、たんに消極的な厄介払いにとどまるのではなく、かれらを放ってゲリラ戦をやらせ、政府軍との交渉を有利にみちびこうとする底意があったのではなかろうか」と記しており、勝が近藤らの意図を十分に分った上であえて甲府への出兵を認めたとしている。


 甲陽鎮撫隊は、幕末の日本において、特に新撰組の起源に関わる組織の一つです。この隊は、主に薩摩藩と長州藩が中心となって結成され、幕府に対して反乱を起こした過激な勢力に対処することを目的としていました。甲陽鎮撫隊の名前自体は、甲府(現在の山梨県甲府市)周辺を治安維持するために設置されたことから由来しています。


甲陽鎮撫隊のメンバーには、以下の人物が含まれています。


1. 近藤勇

近藤は新撰組の初期の指導者であり、甲陽鎮撫隊にも深い関わりがありました。甲陽鎮撫隊は、主に新撰組のような武士たちを集めて構成されていたため、近藤の影響が色濃く反映されていました。



2. 土方歳三

新撰組の副長で、甲陽鎮撫隊にも加わった土方は、その厳格な指導力で知られています。



3. 沖田総司

沖田は、新撰組の隊士として有名で、甲陽鎮撫隊にも一時期参加していた可能性があります。



4. 永倉新八

新撰組の隊士で、甲陽鎮撫隊にも参加していたとされる人物です。



5. 原田左之助

新撰組の隊士で、甲陽鎮撫隊の活動に加わった一人です。



 甲陽鎮撫隊は、最終的に薩摩藩、長州藩、そして新撰組が関わった時期の中で、武士たちの忠誠心や戦の技術を示す重要な隊であったと言えます。




 甲陽鎮撫隊の結成に至る経緯について、会話形式で解説します。



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近藤勇:「慶喜公から甲府城を任せていただけるようお願いしたい。これからの時期、甲府を拠点にして新たな戦を始めるべきだ。」


永倉新八:「近藤さん、それはかなりの賭けですね。江戸に戻ったばかりで、しかもあの敗北の後に。何を考えているんです?」


近藤勇:「甲府城を自分の手に入れ、そこで徳川家の復興を図りたい。慶喜公を甲府に移して、戦力を整え直すつもりだ。」


永倉新八:「なるほど、甲府は戦略的に重要な場所ですからね。しかし、新政府軍との戦いを避けられないのでは?」


近藤勇:「それも覚悟の上だ。恭順の姿勢を見せつつ、裏では一戦を計画するつもりだ。」



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このように、新選組の近藤勇は甲府を拠点として新たな戦力を整え、徳川家の復興を図ろうとした意図があった。しかし、その行動が新政府軍にどう映るかは不確かで、勝海舟が後に述べたように、近藤らの出兵には新政府軍との「一戦」を見越した面もあったとされています。



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勝海舟(後に振り返る):

「近藤勇たちは敗北後も戦意を失っていなかった。甲府に行く前に『一戦を含み』と考えていたのだろう。」


永倉新八:「つまり、勝さんは近藤さんたちを放置し、ゲリラ戦をさせて新政府軍に圧力をかけようとしていたということですか?」


勝海舟(回想):「そうだ、表向きは恭順を示しながら、陰で戦争を続ける計画を認めた。徳川家のために、どこかで戦いを有利に進める手段としたのだ。」



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勝海舟の考え方には疑問を持つ人もいますが、彼が近藤勇たちの行動を単なる「厄介払い」ではなく、戦局を有利に進める一策として認めた可能性があるとする見方もあります。実際、甲陽鎮撫隊の結成は、単なる兵力の再編ではなく、戦略的な意味を持っていたと言えるでしょう。


 物語の本編


第一章:突然の転生


霧子は、現代の大学生として平穏無事な日常を送っていた。彼女は日本史が好きで、特に幕末の動乱に興味を持っていた。ある日、講義後に古書店で見つけた一冊の本に心を奪われる。その本は、甲陽鎮撫隊に関する詳細な記録だった。興味津々でページをめくっていた霧子は、突然目の前が真っ暗になり、意識を失う。


目を開けると、そこは見知らぬ時代、幕末の日本だった。霧子は慌てて周囲を見渡し、気づくと甲府の街中に立っていた。誰もが戦の気配を感じ、街は混乱している。


「これは…どういうこと?私は…どこにいるの?」


霧子は自分がどのようにしてこの時代に来たのか、全く理解できなかった。気づくと、街中を行き交う武士たちの中で、ひときわ目立つ男たちがいた。近藤勇、土方歳三、沖田総司、そして彼らの周りを取り巻く甲陽鎮撫隊の面々。霧子は、ここがまさに甲陽鎮撫隊の本拠地であることを直感で悟る。


「私、どうすればいいの?」


途方に暮れる霧子は、そこで不意に出会ったのが、甲陽鎮撫隊の一員を名乗る男性だった。


「お前、名前は何だ?」


「えっ…中沢琴です。」


霧子は、慌てて偽名を口にする。彼女は過去の知識を活かし、既にこの時代に名前を持つ人物である「中沢琴」を知っていた。しかし、実際には彼女がこの名前を使っていることが、さらに不安を掻き立てた。


「中沢琴か。珍しい名前だな。だが、隊の一員として働いてもらうぞ。」


霧子は、思わずうなずいた。甲陽鎮撫隊は新政府側の一部として戦い、時には新撰組とも接触があったことを知っていた霧子にとって、ここで何かをしなければならないという強い使命感が芽生えていた。



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第二章:戦いの始まり


数日後、霧子は甲陽鎮撫隊の一員として訓練を受けることになった。だが、武道経験もない彼女にとって、刀を握ること自体が苦痛だった。彼女の持つ現代知識は、戦術や戦略の面で役立つかもしれないが、戦いの場においては全くの素人だった。


「もっと力を込めろ!」

土方歳三の厳しい声が響く。


霧子は、力任せに刀を振るが、全く相手の刀に対して当たりもしない。だが、彼女はただの学者ではない。現代で培った観察力と冷静な判断力を駆使し、少しずつ周囲の動きを学んでいった。


ある日、隊の指導官である近藤勇が彼女に言った。

「お前のような者が、この隊に入って何の意味があると思っている?お前にできることは、力ではなく、知恵だ。」


霧子は驚いた。彼女の知識が、甲陽鎮撫隊にとって重要な役割を果たす可能性があると、近藤は見抜いていたのだ。


「近藤さん…私は、ただの現代の学生です。でも、歴史や戦術に関する本を読んで知識はあります。おそらく、それが戦いに役立つかもしれません。」


近藤はしばらく黙って彼女を見つめてから言った。


「それなら、知識を使って戦え。隊にとって、それが最も価値のあることかもしれない。」


霧子はその言葉を胸に、戦局を有利に進めるために自分ができることを試みた。彼女は戦術書を読み漁り、隊の動きを理解し始める。そして、甲陽鎮撫隊の敵勢力に対する戦術を少しずつ提案するようになった。



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第三章:歴史を変えるか、守るか


甲陽鎮撫隊は、日々戦闘を繰り広げていた。霧子は、少しずつ隊の中で重要な位置を占め始めていた。しかし、彼女の現代知識がもたらす影響は、予期せぬ形で隊内に波紋を広げる。


ある日、霧子は近藤と土方に戦局についての提案をする。


「敵の大将を倒すのは一手です。しかし、それを守るために最適な戦術は…」


霧子が提案した戦術は、甲陽鎮撫隊が勝利するための鍵となった。彼女の指摘により、戦局が有利に進んだかに見えた。しかし、霧子は心の中で悩んでいた。このように戦局を変えることが、果たして未来にどう影響を与えるのか。


そして、霧子はついにその決断を下す時が来る。



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第四章:戦いの終結


霧子が知る未来では、甲陽鎮撫隊は最終的に敗北し、新政府軍の手に渡る運命にあった。しかし、彼女はその運命を変えるべきではないのか、という問いが心に渦巻く。


ある夜、霧子は甲陽鎮撫隊の隊士たちと共に最後の戦いに臨む。彼女は、未来の知識を持ちながらも、過去の流れを変えてしまう恐れに悩んでいた。しかし、戦いが激化する中で、霧子は自分の信念を貫くことを決意する。


「歴史は変えられる。でも、それによって生じる未来の痛みを背負う覚悟はある。」


戦いの中で、霧子は自らの命を懸けて隊士たちを守り、戦局を有利に進める。しかし、最終的に新政府軍との戦闘の中で霧子は深手を負い、意識を失う。



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第五章:未来へ


霧子が目を覚ましたとき、彼女は再び現代の世界に戻っていた。甲陽鎮撫隊と戦った記憶は、夢のように遠いものとなっていた。


しかし、霧子は確信していた。自分がその時代にいたこと、そして甲陽鎮撫隊の戦いに関わったことが、どんなに小さなことであれ、歴史に何らかの影響を与えたのだと。


彼女の心には、もう一つの問いが残っていた。

「もし、再び過去に戻れるなら…私は、どんな選択をするべきか?」


物語は、霧子がその答えを求めて歩みを進めるところで幕を閉じる。







 

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