第38話 氷山空母ハボクック
場面:戦闘後の回天艦、夜
宮古湾海戦が終息し、新徴組の艦隊は勝利を収めた。戦場の静けさが艦内にも広がり、艦内は戦闘の興奮からようやく落ち着きを取り戻し始めていた。しかし、戦局を支配したことで、新たな緊張感が艦内に漂っていた。
中沢琴は艦橋に立ち、外の海面に目を向けていた。冷徹な戦士としての顔を保ちながらも、その胸の内にはさまざまな感情が交錯している。彼女の背後から、足音が近づいてきた。
篠原(静かに) 「よくやったな、琴」
琴(振り返り、少し驚いたように) 「篠原…」
篠原は艦内の戦闘が終わった後、少しだけ休息を取るために中沢琴の元に来た。彼は、いつもの冷静な顔をしているが、その眼差しには少しだけ柔らかさがあった。
篠原(微笑みながら) 「お前があの艦を奪取した時、まるで歴史を変える瞬間を見ているようだった。お前なら、きっとこの戦いを制するだろうと思っていた」
琴(少し笑う) 「そう言ってくれると、少し安心する。でも、まだ終わってない。これからだ」
篠原(真剣な表情で) 「俺たちがここまで来たのは、お前の冷静さと判断力のおかげだ。それに、こうして未来を変えるために戦っているのは、お前だけじゃない。我々全員だ」
琴(少し頷きながら) 「うん、私一人じゃない」
その言葉が終わると、しばらく沈黙が流れた。周囲の音が消えたかのように、艦内の静けさが二人の間に広がる。琴はふと、篠原に向かって歩み寄った。
琴(低い声で) 「でも、戦いが終わったとして、私たちの戦いがどんな結果を生むのか、まだ分からない」
篠原(ゆっくりと手を差し出し) 「未来は、俺たちの手の中にある」
その言葉が響き、琴はしばらく篠原を見つめた。彼の目には、決して揺るがない信念が宿っている。その瞬間、琴は心の奥で感じていた不安とともに、ひとつの決意を固めた。
突然、篠原が一歩踏み出し、琴の手を取る。そして、そっと彼女の顔を見つめ、唇を近づけた。琴はその動きに応じるように目を閉じ、二人の唇が重なった。
その瞬間、二人は時空を超えた戦いの中で交わる、ひとときの安らぎを感じていた。激しい戦闘と冷徹な任務の合間に訪れた、ただひとつの静かな瞬間。二人の心は、戦の先にある未来を共に歩むことを確かに誓ったように、重なり合った。
琴(キスの後、静かに) 「私たちの未来…確かに、私たちが守らなければ」
篠原(優しく、しかし力強く) 「その通りだ。どんな困難が待ち受けていても、俺はお前と共に戦い続ける」
その言葉に、琴は深く頷き、篠原の手を握り返す。
新徴組の未来、そしてその戦いがどこに向かうのかはまだ分からない。しかし、彼らは確かに新しい時代を作るために、共に歩み続ける決意を新たにしたのだった。
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明治維新の動乱期、蝦夷地は大きな戦場となった。箱館(現在の函館)は、幕府が直轄地として支配していたが、新政府はこれに代わり箱館府を設置し、政権を掌握しようとした。幕府直轄時代、奥羽諸藩は度々蝦夷地に兵を派遣していたものの、東北戦争の終結と共にその多くは撤退した。その結果、蝦夷地の防備は薄く、箱館府の兵力もわずかで、松前藩の兵が防衛にあたるのみとなっていた。
そんな中、旧幕府軍の榎本艦隊が北上しているとの情報が届き、箱館府は援軍を要請した。最寄の弘前藩から家老杉山成知が指揮する4小隊が出動、10月19日に秋田に到着した福山藩の約700名、大野藩の約170名と合流し、箱館に向けて進軍を開始した。彼らは10月20日に箱館に到着し、箱館府軍と合流、旧幕府軍の迎撃態勢が整った。
旧幕府軍は、上陸後、まず二手に分かれて進軍した。大鳥圭介が率いる部隊は峠下や七重方面から、土方歳三が指揮する部隊は鹿部や川汲峠を経由して湯の川方面から箱館へ向かう。旧幕府軍は無駄な戦闘を避けるべく、まず箱館府知事である清水谷公考に使者を送ることを決定した。使者には、人見勝太郎や本多幸七郎を含む30名が選ばれ、彼らは新政府への嘆願書を携え、箱館府と交渉を試みることになった。
だが、交渉はうまくいかず、明治元年(1868年)10月22日夜、峠下に宿営していた旧幕府軍は、箱館府軍の奇襲を受け、戦端が開かれる。清水谷公考はこの襲撃を受け、急遽防衛戦を開始、両軍は激しくぶつかり合った。この戦闘が新政府と旧幕府の対立をさらに激化させ、後の箱館戦争へとつながっていった。
戦闘の結果、旧幕府軍は一時的に後退し、箱館の防衛線が一層強化された。しかし、戦争の行方はまだ予断を許さず、両軍の激闘は続くこととなる。
続編:新政府軍のタイムスリップ作戦
戦闘が続く中、思いもよらぬ事態が発生する。箱館戦争の激化とともに、新政府軍の内部で「時空を越える力」を利用する計画が密かに進行していた。それは、時代を超えて技術力を手に入れるための大胆な作戦であった。新政府軍の中でも特にその技術に精通していたのは、優秀な科学者であり、また軍事戦略家でもあった松本雄之助である。
松本は、時空を越える力を持つ「潜水艦型タイムマシン」の開発に成功していた。このタイムマシンは、実際には戦争の勝利を決定づける可能性のある未知の技術を持っていた。松本は、この装置を使い、未来の技術を手に入れて新政府軍を有利に導こうと決意した。
計画が実行に移されると、松本はタイムマシンを指揮する特別部隊「時空隊」を編成。彼らはタイムマシンを駆使して、未来の技術を手に入れるため、1945年のイギリスへと飛ぶことを決定した。目的は、第二次世界大戦の終結を間近に控えたその年に存在していた、伝説の「氷山空母ハボクック」を盗み出すこと。ハボクックは、未来の戦艦技術の中でも極めて高度なものとされ、その存在はまさに“未来の戦艦”と言われていた。
松本とその部隊は、タイムマシンに乗り込み、無事に1945年のイギリスへと到着した。彼らは戦時中の緊張感漂うロンドン郊外に降り立ち、急速に目的地へ向かう。ハボクックは極秘の軍事基地に隠されており、彼らはその情報を現地のスパイ網を通じて得ていた。
イギリス軍の厳重な警戒の中、松本たちは巧妙に基地に潜入。タイムマシンの技術と、事前に仕込んだ現地の軍服を駆使し、見事にハボクックのある施設にたどり着く。氷山空母ハボクックは、その名の通り、氷山のような巨大な構造物であり、内部には未知のエネルギー源が搭載されていた。
松本は、ハボクックを盗み出すための計画を立て、部隊は即座に動き出す。無事にハボクックを手に入れると、タイムマシンでその空母を未来へと持ち帰る準備を始める。だが、イギリス軍の反応は迅速だった。基地内での異常事態を察知したイギリス軍は、空母を守るために全力を挙げて出動し、激しい追撃が始まる。
タイムマシンでの撤退は一刻を争う中、松本たちは必死に戦闘を繰り広げながら、ハボクックをタイムマシンに接続し、戦艦を未来の時代に引き戻す作業を行う。ついに、数々の銃撃をかいくぐり、松本たちは無事にタイムマシンに乗り込み、1945年の世界を後にする。
その後、タイムマシンが再び現代の日本に到着すると、新政府軍は氷山空母ハボクックを手に入れることに成功。未来の戦艦技術を手に入れた新政府軍は、その力を利用して箱館戦争を有利に進めることができるようになった。ハボクックの搭載する未曾有の兵器や技術が新政府軍の戦力を圧倒的に強化し、旧幕府軍に対する決定的な優位をもたらす。
箱館の戦闘は激化し、ついに旧幕府軍は包囲され、降伏を余儀なくされる。松本のタイムスリップ作戦は、戦局を一変させ、新政府軍の勝利を確実なものにした。そして、ハボクックの存在は、未来の技術力を取り入れた新しい時代の到来を示す象徴となった。
この出来事が示すのは、ただ単に戦争の勝敗だけではない。時空を越えた戦いの中で、新しい技術と知識がどう時代を変え、どのように歴史を作り出していくのか。その力を手にした者が、未来を支配することになるという事実だった。
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