第26話 江戸の戦闘と情景

1. 江戸の夜、戦闘の始まり


江戸市中、夜の帳が下りた頃、街道は薄暗く静まり返っていた。しかし、路地裏や陰の中では、何かが動いている気配が漂う。新徴組の隊士たちは、夜の見回りを終え、帰途に就いていた。


「おい、あそこ…」田村が、目を凝らして指差した先に目をやると、数人の影がひっそりと動いていた。姿は黒装束で、顔を隠している。明らかに不審な者たちだ。


「行くぞ。」高橋泥舟が静かに言うと、隊士たちが足音を忍ばせて路地の中に足を踏み入れた。


少し進むと、目の前に広がるのは酒屋の前。そこに立ち尽くす数人の男たちが、酔っ払っているのか、それとも何か不正を働いているのか、怪しげな雰囲気を醸し出していた。酒屋の主人も驚いた表情を浮かべ、目を合わせるなり低い声で囁いた。


「助けてくだされ! こいつら、無銭飲食しているんです!」


高橋は無言で一歩前に出ると、隊士たちに目で合図を送る。森田が小さく息を吐き、刀を引き抜いた。田村もまた、手元の刀に力を込める。


その瞬間、男たちが気づき、慌てて刀を抜こうとする。しかし、彼らの動きは遅かった。高橋がまず一人を突き飛ばし、そのまま田村が次の一人に切りかかった。


「なんだ、この野郎!」男の一人が鋭く叫びながら、刀を振りかざすが、田村はすかさずその刀を受け止める。


カンッ!


金属音が響き渡り、田村は素早く反撃を見舞う。「これで終わりだ。」と一言、相手を制圧した。


他の隊士たちもそれぞれ、短刀を交えながら、次々と盗賊たちを倒していく。森田は、目の前に現れた男を瞬時に斬りつけ、倒れる間もなく、周囲の状況を冷静に見渡す。


「これで全員制圧したか。」森田が一息つく。


高橋が素早く近づき、倒れた男たちを確認する。「無銭飲食の上、暴力を振るっていた。放置すれば江戸の治安が乱れるところだったな。」


その場に酒屋の主人が駆け寄ってきた。「ありがとうございました、助かりました! こいつら、何度も店に押し掛けてきて…」と感謝の言葉を述べる。


高橋が軽くうなずく。「無理もない。江戸の街中は、こういう奴らがうろついている。だが、今夜はお前も助かった。」


2. 江戸の町並みと不穏な空気


夜の江戸は、一見静かに見えても、裏では様々な人々の思惑が渦巻いていた。燈火が揺れる家々の軒先、木造の家々が並ぶ小道、そして見慣れた風景の中に潜む危険。それらは、まるで何かを待っているかのように、全てが互いに繋がり合っている。


新徴組の隊士たちは、少し安堵の表情を見せながら、また元の巡回に戻る。田村が歩きながら言った。「ほんとに、江戸の街ってのは、隠れたところで何が起こってるかわかりませんね。」


森田も答える。「だな、夜になると、昼間の顔が見えないだけで、色んな連中がひしめき合ってる。」


高橋が冷静に言う。「だが、それもこれも、お前たちが守るべき江戸の一部だ。江戸が静かであろうと、夜の顔が見えなければならん。それが役目だ。」


「ふん。」田村が少し不安げに目を細める。「でも、どうせまた別の問題が起きるんでしょう。治安が良くなったって、それが続くわけじゃない。」


高橋は静かにうなずいた。「そうだ。だが、どんなに悪しき者が現れても、俺たちはそれに立ち向かうのみだ。」


その時、遠くから掛け声が聞こえてきた。「たーっ!」


その声は、明らかに新選組の旗を掲げて戦う者たちのものだった。どうやら、近藤勇ら新選組が一帯で活動をしているようだ。近くの町屋では、彼らが集結している様子も見られた。


高橋が一瞥をくれると、田村が続けて言った。「新選組か…。」


森田も言う。「近藤勇か…。あの男の志は理解できるが、手段に疑問がある。どうも血生臭い。」


高橋が厳しい表情で答える。「だが、俺たちも選択をしなければならん。それが俺たちの仕事だ。決して、迷ってはならん。」


3. 江戸の情景、再び戦闘


新徴組が江戸市中を守りながら、また一つの事件が起こった。今度は、盗賊の一団が押し入っていた大店が襲撃されている。店主が命をかけて守り抜いていたものの、相手の数が多すぎて追い詰められている。


「行くぞ、みんな。」高橋が厳しい声で言うと、隊士たちは一斉に走り出す。


道を駆け抜け、ついに目的地にたどり着く。店の扉が破られ、数人の盗賊が金品を奪おうとしていた。高橋はすぐにその場を見渡し、「お前たち、そこで止まれ!」と叫んだ。


盗賊たちが振り返り、驚きの表情を浮かべた瞬間、森田が前に出て、すばやく一人を倒す。「手出しするなら、許さんぞ!」


戦闘が始まると、刀と刀の音が激しく響き、江戸の夜が再び激しく揺れ動く。高橋は冷静に周囲を確認しながら、「町の平和を守るために、俺たちは戦う。」と心の中で誓いを新たにする。


4. 戦闘の後に


ようやく盗賊たちを打倒し、店主を助けた新徴組の隊士たちがその場を去ると、静かな夜の空気が再び戻ってきた。酒屋の前で、隊士たちは再び集まり、互いに戦いの成果を確認し合った。


「今日は随分と動いたな。」田村が息を整えながら言う。


「だが、まだまだだ。」高橋が冷静に答える。「夜の江戸は、我々が守るべき場所だ。どんな者が現れようと、俺たちはそれを許すわけにはいかない。」


その言葉に、隊士たちはうなずき、改めて心を引き締める。江戸の町にはまだ、守るべきものがたくさんあるのだ。


夜風が冷たく、空には星がきらめいていた。江戸の街は、どこまでも続いているように感じられた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る