静かな夜

朱田空央

静かな夜

 木枯らしの吹く肌寒い、静かな夜であった。

 金糸の髪に琥珀こはくの瞳を持つ少女。彼女は薄汚れた鞄と共に、穢れた白いワンピースとともに、この橋の上にやってきた。水面に浮かぶ三日月。それはとても綺麗で、とても恐ろしい。そして、無もなき少女の微笑みは、三日月の如く。

 少女は人を殺した。何度も、何度も、何度も。小脇に抱えた快刀懐刀で。ありのまま、生得した恨みを一身に、一心に、一真に。

 本懐を果たした少女は、誰も通らぬ橋の上、三日月を傍目に、身を投げた。


 翌日。伯爵家から、惨殺された伯爵が見つかった。新聞には大々的に取り上げられた。そして、小さく、身元不明の水死体が発見されたと報じられた。

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静かな夜 朱田空央 @sorao_akada

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