普通の現代ダンジョン(698文字)

ペイフォ

その非日常は都市を侵食するー虚構のクオリアは体験の不在

昨日、近所の市民公園にダンジョンができた。


アトラクションではない。


子どもが発見、わいわい騒いでいるところを頑固じいさんが通報し、ダンジョン管理組合の人が視察したら、危険度が低いとの評価をして帰ったらしい。


そのうち回覧板でも回ってくると思うが、うちは管理費とか払うんだろうか


うちの母に、ごろごろしてるくらいならダンジョン行ってきたら、と探索者になることを促される。


20代後半になって、身体のキレが衰えてきたので、確かに運動したほうがいいが。


それをするなら、小遣い稼ぎもできたほうがいいか、と了承。


ジャージにヘルメット、バット姿で近所をうろつく、という恥ずかしいスタイルで公園についた。


ランニングコースの脇に、どこまでも行けるドアっぽい構造物があった。


学生時分にランニングしてた時には、ベンチがあった場所だ。


まるごと、構造物が飲み込んだのだろう。


中に入ると、ピコーン!と頭の中に音がした。


「入場者を確認。ステータスとスキルを付与します。配信システムとの接続完了」


そんな、AIか声優か微妙に人間味のない音声が脳内に響いてきた。


こういうシチュエーションは知ってる。


「ステータスオープン!」


すると、脳内に


状態・虫歯2本、スギ花粉アレルギー


スキル・いいねパワー


若干いやなステータスに苦い表情をする。


携帯通信機をダンジョンに持ち込むと、ダンジョン専用のアプリがインストールされ、勝手にどこかから撮影された映像が全世界に垂れ流される、という仕組みは聞いたことがある。


おそらく、その配信でいいねをもらうと、自分へのパワーに変換される、のだろう。


試しにやってみるか


「おらにいいねを分けておくれー!!!」


何もおきない。

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