第4話
高校最後の期末試験が近づいて、俺はやっと重い腰をあげた。
『あとは卒業を待つだけ』
とは言っても、試験範囲も知らないんじゃ・・・な。
授業中、ノートなんかとってないから、また今回も誰かに借りないとなぁ。
裕太か?
・・・いや、ダメだ。
裕太は俺以上に寝てる。
じゃ、また・・・
いつものように、加奈か~?
加奈にはホント、頭上がんねぇ。
試験前になると、俺はいつも加奈にノートを借りた。
3年間、加奈のノートで勉強したんだ。
大学受かったのも、加奈のおかげかも知れねぇなぁ・・・
加奈は。
チビの頃から知ってたはずなのに、いつの間にかすげぇ大人になった。
落ち着いてて、しっかりしてて。
たぶん・・・
綺麗なほうなんじゃないのかな?
身近過ぎて、俺はよくわかんねぇけど。
「加奈、悪りぃ。ノート貸してくれ。」
「はいはい。
あ、でも今、裕太に貸しちゃってるんだ。拓は明日でいい?」
「全然いいっす。
すいません、いつも。」
「ふふふ。私はいいけど・・・最後くらい、美咲に借りたら?」
意味ありげに、加奈は笑った。
「美咲だって、ちゃんとノートとってるよ?美咲なら、拓もしゃべれるでしょ?」
「・・・いいよ・・・。明日、頼むよ。」
俺の気持ち・・・誰にも言ってないのに。
加奈のヤツ・・・気づいてんのか?
加奈が立ち去った後、美咲がノートをピラピラさせて近づいてきた。
「ジュース一本で、見せてあげてもいいけど~?」
内心、嬉しいのに、
「いい。加奈に借りるから。」
素っ気なく答えてしまう。
「なによ。せっかく親切に・・・」
「何が親切だよ!?加奈はいつも、タダで見せてくれるぜ!?」
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