捕らわれ悪魔の世話係にされました
月宮紅葉
第1話
この世には魔法、そして魔法使いが存在しているという事実を知る者は少ない。
魔法使い達は昔から、魔法の存在を、魔力を持たない一般人に隠してきたからだ。
そのため魔法使い同士での婚姻が多く、また、魔力は親から子に遺伝することも多いため、魔法使い達の血族も存在している。
この大きな純和風の屋敷を所有している、
ことの始まりは、ある日の昼過ぎ。
使用人の女性が、慌ただしい様子で入ってきた。
彼女は
「
「……はい、わかりました」
肩まで伸びた、あまり艶の無い茶髪。感情の読めない表情。何度も繕ったあとのある粗末な着物。
幼さの残る顔立ちのせいで学生のように見えるが、彼女は二十一歳。成人している。
「あの、洗い物は皆さんに任せていいですか?」
「全然いいわよ」
他の使用人たちも同意し、
普段誰も立ち入ることのない地下室。
二人の目の前には、大きな檻。
その中には、一人の若い男性。
「
紫がかった黒の短髪、虚ろだが美しい藍色の瞳。
それだけを見れば、ただの青年のようだ。
だが、頭の二本の角と背中の黒い羽は、まるで
そう、彼は悪魔だ。それは、
だが、彼はひどく弱っているようでぐったりと端の方に寝転がっていた。
檻の中を見つめる当主の表情は、汚物でも見るようなものだった。
それもそうだろう。魔法使いにとって悪魔は天敵。
本来であれば、こんな状況はありえない。
「本当なら、こんなのは放っておくべきだが、
——嘘、なんだろうな。
言ったのは本当なのだろうが、本心は違うのだろうと、
しかし、決して口には出さない。
——私はやっぱり、この家に必要ないのね。
そう思っても、
「具体的には何をすれば良いのでしょうか?」
「そうだな……食事を持って来てやればいい」
「わかりました」
用は済んだとばかりに、当主は背を向け、足早に立ち去っていく。
一人残された
厨に行くと、洗い物が終わっているにも関わらず、使用人の女性が一人残っていた。
「ごめんなさい、
頭を下げて言う彼女に、
「いいんです。その内こんなことになるとは思っていましたし」
「それより、ごめんなさい。当主様から、他は何もしなくていいと言われてしまって……」
そんなことはどうでもいいと言う彼女に安心したからか、
といっても、ほとんど変わりはなかったのだが、長年
「……本当に、申し訳ありません、
彼女は周りをよく見てから言い、深々と頭を下げた。
捕らわれ悪魔の世話係にされました 月宮紅葉 @Tukimiya-Momiji96
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