第17話 ぼくはこーらをのむ
草のしげみにかくれて小学校に面した大きな通りのようすを見る。
たとえゾンビになったとしても体は人間のままだ。肌がこげ茶色になったり、目が充血したみたいに赤くなることはあるけど、そのほかは人間と変わらない。オリのなかにいるお母さんとお父さんを見ててそれはわかっていた。
だからキバなんてはえない。おそわれたときにキバに見えたのはただの歯。でも、人間と違って肉をかむことにようしゃはないから、キバに見えちゃったのかもしれない。
かまれた手を見る。ゴム手袋のおかげでケガはないけどしっかりと感しょくはのこっている。カバンを前に持ってきてなかから出した新しいゴム手袋を手にはめる。もう、これで最後だ。スーパーに行けばまだストックがあると思うけど、ここからスーパーまではまだ遠い。
向かいの歩道に面した小学校の駐車場は、なぜかたくさんゾンビが集まっている。他の場所より広いしまだまだゾンビの数は多いから、みんな肉を求めて集まってくるのかもしれないけど。ゾンビが次々と変な声を上げて走りながら駐車場へ入っていった。知らない顔のゾンビたちだけど、学校には先生も友だちもいた。今もみんなでみんなの肉を食べ合っているのかもしれない。
手に持ったままだったネックレスをカバンの底に入れる。先生と友だち、大人のゾンビと子どものゾンビ、どっちが強いかは考えなくてもわかる。
友だちの多くはもうゾンビのお腹の中にいると思う。こうなる前の想像では、今ごろ学校の体育館でみんなでゾンビをげきたいして、一緒にご飯を食べたりいろんな話をしていたはずなのに。でも、ゾンビが駐車場に入っていくから見つからないように行くのは簡単だった。
ここは走らなくてもいい。足音を立てないようにゆっくりとしげみのなかを歩いてまずはすぐとなりのコンビニのなかに入る。
コンビニのなかはこの前来たときとあまり変わっていなかった。パンやお弁当、おかずに飲みもの、どれもそのままのこっている。なかにはくさくて虫がわいているものもあったけど、多くの商品が届いたばかりみたいな感じだった。お店のなかにはゾンビもいないから快適だ。
「のど、カラカラ……」
暑くはないけど、のどがかわいていた。ドリンクが入っている元冷蔵庫からなかなか飲めないコーラを選ぶ。さすがにここだとまずいのでトイレに行ってコーラのフタを開けた。もちろん、トイレのドアは開けたまま。
プシュ、とそうかい感のある音がする。ぬるくて甘すぎるけど、お母さんには買ってもらえなかったからすごくおいしい。カラカラにかわいていたのどが一気に回復する気がした。
お父さんとお母さんがゾンビになってからいろんな飲みものを飲んだけど、やっぱりコーラが1番おいしいと思う。友だちが言ってた「キンキンに冷えたコーラ」はまだ飲んだことがないから、ざんねんだけど。
フタをしっかり閉めてカバンに入れる。
「よし、行こう」
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