第8話 まちはゾンビにせんりょうされた
カーテンをそっと開けると、外には何人ものゾンビがウロウロと歩道の上を歩いていた。
ボクの家のことは──ゾンビたちはボクがここにいることにはまだ気がついていない。
お父さんとお母さんがゾンビになってからもう2週間はたった。
2人のスマホが何十回もなったけど、もうならなくなった。学校からも連らくはこないし友だちもやってこない。
一日中ずっとつけていたテレビも急にプツンと切れたきりでうつらなくなって、冷蔵庫も部屋の明かりも電気が全部消えてしまった。
となりの家もそうだ。向かいも。だけど、さわぐ人はあまりいなくてさわいでいた人もいつの間にかいなくなってしまった。
食べものがなくなってきて、ボクはちょうど3日目に外に出た。
家から急な坂を下りて学校の通り道にあるコンビニは、自動ドアが閉まっていたけど、ドアのガラスがわられていて簡単に中に入ることができた。
カバンに入るだけの食べものや飲みものを取って外に出たボクは、横断歩道の先にある小学校を見た。
コンクリートのへいに囲まれた駐車場には、友だちや先生に似たゾンビがうろうろしていた。
それからもだいたい3日経つと何かを取ってこなくちゃいけなくて、そのたびにゾンビに見つからないようにしながらコンビニやスーパーに何度も行った。
ボクと同じような人がいるかもしれない。
毎回外に出るとそんなふうに思ってたけど、結局2週間たってもゾンビ以外の誰とも会うことはなかった。
帰りに必ず通ることになる学校を見れば、相変わらずゾンビのむれがグラウンドのなかをぐるぐるぐるぐるさまよっている。
だからきっと、ボクらの街、お父さんが「田舎」だって言っていた街は、もうとっくにゾンビに占領されてしまったんだと思う。
友だちも学校ももうない。でも、今のボクには家族がいる。お父さんとお母さんがいる。だから、新しいお父さんの体を持ってこないといけない。
──ボクは作戦にとりかかった。
お父さんをつかまえることができたのは、ボクがたまたまオリの中にいたから。
外にいるゾンビをつかまえるのは簡単なことじゃない。何か道具が必要だ。それにゾンビにかまれたらボクもゾンビになってしまう。
つかまえなきゃいけないのは、お父さんと同じくらいの体型のゾンビ。ボクより背たけもあるし体重も重い。
キッチンのトビラや引き出しを開けてみても出てきたのは調味料や料理道具くらい。
包丁はブキにもなるかもしれないけど、あせったら自分を切ってしまうもしれないから使えない。他の道具も同じような気がした。
でも、まだ手が届かない上のたなになら何かがあるかもしれない。
キッチンをそのままの状態にして、ボクはリビングのドアをゆっくり開けると玄関の物置に向かった。お母さんが朝ご飯を食べ終わったのか、またうなっている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます