青い夢の旅日記 Ⅰ
沼津平成
第1話 スターチア海の絵師
スターチア海、時々小さな
今日も安全な、そんな広い海。
よかった、正常だ――ウォルト船長はちょび
「絵師、来てくれ」
とウォルト船長はいった。
「はい、ただいま」
やってきたのは若い女性だった。二十にもなっていないくらいの痩せた女だった。
「船をとめろ! ……エリー、この海、美しい。描いてくれないか?」
ウォルト船長の声に気づかない絵師は、うっとりしながら海を眺めていた。
ウォルト船長は、(これは、描いてくれるのだな)と解釈した。そして、席を立つ。
丸い窓——クティル大穴の近くに、四つ椅子がある。背もたれのついていない、古いラーメン屋にあるような丸い椅子。可動式。
エリーはそれに腰掛けた。ポーチから、絵の具とパレットを取り出し、紙を頼んだ。
エリーは満面の笑みを浮かべた。「描くよ!」
ウォルト船長は、エリーのその声を聞き留めると、階段を上がっていった。
この船は最初はそれほどでもなかったが、いろんな浮島に漂着するうち、次第に豪華になっていった。
さて、ウォルト船長は時々思うことがある。家族に、二度と会えないということだ。船旅をはじめたのは、お金がなかったからだ。
最初は浮島で、エンティ島の特産であるバナナを売るだけにしようと思っていた。しかし、次第に、船旅が楽しくなって、両親を下ろして、丸太を重ねただけのボロいイカダに乗りながら、旅を続けた。
「今から引き返しても、両親には会えないだろうな……」
そう思うと自然と涙が込み上げてくる。しかし、ウォルト船長はすぐに思い直す。「なあに、この旅だって十分に楽しいじゃないか」
そう。——両親の恩返しのために。
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