第3話 世界最弱の探索者の実情
俺達S級探索者は、この世に生まれ落ちた瞬間から、探索者として生きていくことが強制させられる。
そもそも、S級認定される条件は何かというと、『根源現界』を使用出来ることだよ。
『根源現界』とは、根源、魂が保有する力を、認識し、理解し、この世に顕現させることだ。
要するに、呪術〇戦の領域展開に近しいモノだとでも思っておいて欲しい。
ちなみに、俺の『根源現界』は『瞑想録』で力の内容は、擬似的な全知みたいなものだね。
でも、負荷が凄すぎて、ここぞという時にしか使えないんだけどね。
さて、そんな俺の力も相まって、探索者に12歳でデビューした時、最初は期待されてたんだけどね。
俺の最初の担当が、ボスさんのいるダンジョンになって、そっからは、皆のご存知の通りだよ。
探索者教会に掛け合っても、何故か調査すらしてもらえなかった。
でも、その理由を俺は知っているんだよね。
なんか、上の連中が不祥事を起こした際に、俺にヘイトを集めているのを感じてさ。『瞑想録』を使って確認したら、俺をスケープゴートにしてたんだよ。
というより、俺の力を恐れた上が、俺を潰すために、敢えてそうしてるっぽいんだよね。
それを知った時に思ったよね「やっぱりか」ってね。
だって、他のS級に比べて、俺に対する探索者教育や手当てがしょぼかったんだもん。
まぁ、それでも他のS級を超える力を余裕で身に付けたせいで、12歳とかいう、史上最年少で探索者デビューしたんだろうね。
そんなに、俺を排除したかったのか?
そもそも、ボスさんがいるダンジョンは表向きE級指定されているけど、本当はS級相当、いや、それ以上なのを探索者協会は知っているみたいだしね。
まぁ、これも、「世間様に12歳という若さでデビューした探索者に先ずは、E級で慣れさせてから徐々に高難易度の攻略をさせていく」って言って、世間の評判を上げつつ、俺をS級相当ダンジョンで殺す腹積もりだったんだろうね。
それに、俺しか入れないのが都合良かったんだろうね。俺が死んでも、誰も調査できないから、S級相当ダンジョンだってバレる心配もないしさ。
そしたら、俺が中々死なないから痺れを切らして、攻略を始めて1年目に協会が、「あの、E級ダンジョンは一階層しかないのに、まだ攻略出来ていない」って遠回しに世間に公表したんだよね。
そっからだなぁ、俺に対する誹謗中傷やらなんやらが来るようになったのは。
今までは、「慣れていないから、通常より時間がかかるだろう」って世論だったのが、「一階層しかないE級すら攻略できないのか!」に一気に傾いたね。
でも、皮肉だよねぇ。
俺を殺すつもりで、このダンジョンを選んだはずなのに、逆に、ボスさんに鍛えられて、5年前に比べて比較にならないくらい俺は、強くなったからね。
え?「怒らないのか?」だって?
最初の頃は、もちろん怒ったよ。でも、ボスさんと闘っている内にどうでも良くなってしまったんだよ。
ボスさんの所に、配信をしながら突撃したことがあるんだけど、ドローンを一瞬で壊されたって言ったじゃん。
普通なら、壊されたことに対して激おこ案件だけど、壊した理由を聞いたら納得したし、俺が馬鹿だったって思ったよ。
なんか、ボスさん曰く「嫌な気配がした。あのまま配信を続けていれば、空と親しい人に何か起こっていただろう」とのことで、『瞑想録』で調べてみたら、俺が世間にアレを公表した瞬間、家族や友達が殺られていた可能性があったっぽいんだよね。
もちろん、協会の差し金でね。
それで、ボスさんに言われたんだよ。
「然るべき時に備え、己の力を磨く事のみに注力せよ」
それを言われてからは、ひたすらに戦い続けたなぁ。
そして、今に至るわけだけど。
多分、ボスさんに余り時間は残っていないんだと思う。
ボスさんは、正気を保っているのが、そろそろ限界なんだと思う。
ボスさんは、俺に一言もそんなことを言っていないけど、多分合ってる。
ボスさんは永い時間、生き過ぎたんだと思う。
既に、死んでるのに生きているって言うのは可笑しな話だけど、感覚としてはそんな感じだと思っている。
だからこそ、俺も急がなければならない。
ボスさんが以前、「お主が一日でも来ない日があれば、外の人間を皆殺しにする」なんて言っていたけど、ボスさん自体に、それを実行する気はないと思っている。
多分、時間が無いことを知っていたから、敢えてこういったんだと思う。
それに、あながち嘘でもないし。
もし、俺が行かなければ、ボスさんの剣を継がなければ、その時にボスさんが正気を失えば、ダンジョンを無理矢理破壊して、外に出てくるだろう。
そして、ボスさんに対抗出来る強さを持つ人がいない。
そうなれば、この世界の人間は絶滅するだろうね。
だが、今なら何とか出来る。
が、確実に俺は死ぬ。ボスさんの所に1日も欠かさず行って、鍛えた俺なら、俺以外のS級4人でどうにか対処出来るくらいまでは、消耗させることは出来る。
だけど、俺は死にたくないので、ボスさんが正気を保っている内に倒したい。
それに、ボスさんが俺以外に殺られるのは我慢ならないしね。
それは、ボスさんも同じで、俺以外に殺られるつもりは無いと言っていた。
それに、ボスさん、自らの剣で葬ってあげた方が、ボスさんの「後世に遺す」という想いも満たされて満足して逝けるだろうし。
これが、世界最弱の探索者の実情だ。
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