俺にとって、
みるくてぃ
第1話
大学に勤め始めてから早二年。俺、小野友樹は、忙しさもありながら充実した日々を送っている。
大学、大学院を卒業後、心理学を専門とし大学で働き始めた。
平日は大学生に心理学を教えながら、休日は勉学に励んでいる。
仕事も勉強も不自由のない幸せな環境が整っていた。
そして恋愛面もそれなりに安定していた。
俺がお付き合いをしているのは、3年先輩の同じ大学に勤務する桜井拓弥。
二人とも専門が心理学ということもあり、関わっていく中で一年前に桜井さんから告白をされ、恋人へと発展した。
お互い忙しい日々を送っているが、順調に恋人として楽しい日々を送っている。
「友樹、いるか」
研究室で作業を行っているとドアの外から声がしたと同時にドアが開いた。
「今度講義で使う本を貸してほしいんだが」
「桜井さんなら俺よりたくさん持ってるでしょ。それに学校内で名前で呼ぶのはやめてください」
俺の恋人はお互い講義が入っていない時間があるとすぐに俺の研究室へやってくる。
「本当の目的は何ですか」
「デートのお誘い」
桜井さんは学校であってもこんな感じだ。それだけ愛されているのだろうと思う反面、生徒や他の教授に俺たちの関係を知られたらどうするのだという思いもある。
「ここは学校で俺たちにとっては職場ですよ。そいうことは控えてください」
なんて言うと、「この部屋には俺とお前の二人きりだろ」と反論された。
「それと、明後日の夜だめになった。」
明後日の夜というのは、二人で食事に行くという予定のことだと思う。久しぶりに二人の時間が合い二人で過ごそうと前から決めていたのだ。
「学会の準備が終わらなくてな。申し訳ない」
「全然大丈夫ですよ。俺は来週でもいいんで」
少し寂しい気持ちもあったが、仕事なら仕方がない。
桜井さんは他大学の講義を持っていたり学会や講習会に呼ばれることも珍しくなく、俺と比べてめちゃくちゃ忙しい。
そんな桜井さんを同じ職業として羨ましいと思う気持ちと、恋人として応援したいという気持ちの両方が俺にはある。
「準備終わってないなら今も進めたほうがいいんじゃないですか」
「今はお前との時間だ」
その言葉に少し嬉しくなってしまう自分もいた。
「学会ってそんなに大変なんですか」
「他の大学教授も来るしテキトーな準備はできない。俺の立場とプライド的に。正直面倒くさいけどな」
と言いながら桜井さんは笑った。
「友樹もいずれはやらないといけない日がくるから覚悟しときな」
俺も来年や再来年にはもっと忙しくなると信じたい。不安もあるがこの人と一緒にいれば大丈夫だろうという安心もある。
「って、だから名前で呼ぶのやめてください」
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