異世界だろうと極めた武術でどうにかなる〜固有スキルは無いけど拳があります〜
和泉和琴
第1話 お約束の異世界転生
なんでもない日常。いつもの日課のランニング。
俺、
(なんだが…ここはどこだ?俺はランニングをしていたはず…)
目が覚めると俺は見知らぬ空間に居た。
「相沢 樹様、ようこそいらっしゃいました。わたくしは女神アリア。貴方は少女をトラックから庇い死んでしまわれました。」
声のする方へ視線を向けるとこの世の者とは思えないほどの美少女が立っていた。
(死んだ…?俺は死んだのか……はっ!あの時信号無視をして突っ込んでくるトラックから女の子を庇ってそれで…)
「そ、そうだ!あの女の子は無事だったのか?」
「はい。樹様が庇われたおかげで怪我一つなく無事です。しかし…」
「しかし?」
「なんと言いますか…樹様が庇われなくても本来あの少女はかすり傷で済む予定でして…」
女神様はとても気まずそうに話した。
それもそのはず、本来死ぬ予定では無い人間が来たのだ。女神様とて戸惑うに決まっている。
「そ、それじゃあ、俺は無駄死にってやつなのか?」
「は、はい…残念ながら…」
「そうか…でも、その女の子が無事なら何でもいいや!それで?女神様、俺は天国に行くのか?」
「はい。貴方は善良な魂を持つ人間です。本来は天国に行くことが出来ます。ですが、今回の死は言わばイレギュラーな事。その為、特別措置として貴方には選択肢が3つ与えられます…」
女神様の説明を要約するとこうだ。
1つ、元の世界に別の魂として転生する。この時何不自由無く暮らせる家庭の子に転生させてくれるようだ。
2つ、このまま天国に行く。文字通り苦しみも悩みも何も無い幸せな所のようだ。
3つ、地球とは別のところ。所謂、異世界に転生しその際にチート能力を授けてくれるらしい。
(こんなの決まってる!!異世界転生しか無いだろ!!)
「異世界に行くよ!こんなラノベのような展開があるなんてオタク心がくすぐられるってもんだ!」
異世界に行くことを伝えると、何故か女神はニヤッと笑った。
「分かりました。樹様が転生される世界は基本的には平和な所です。安心して異世界生活を満喫されてください。イマハスコシタイヘンデスガ」
「ん?今なにか聞こえたような…」
「それでは、相沢 樹様。貴方はこれから異世界へと旅立ちます。この先、多くの困難や苦悩が待ち望んでいることでしょう。それでも己の力を信じ力強く天寿を全うしてください。女神アリアの加護があらんことを」
女神が喋り終わると床に紋章が現れ、光に包まれていった。何を言ったのか問い詰めようとしたが叶わず異世界へと旅立つことになった。
目を開けると、如何にも異世界といった光景が広がっていた。
「広大な大地に、聳える山々。空には見たこの無い生物が飛び、目の前にはヨダレを垂らしたオーガ。……オーガーーーーーー!!!!!!?????」
やばいやばいやばい!あの女神!何をどうやったらこんな所からスタートするんだ!
こんな時どうすれば……そうだ!ステータスだ!何かチート能力くれるって!
俺はステータス!と唱え自分のステータスを見て驚愕した。
イツキ アイザワ 17歳
職業 無し レベル1
装備 ジャージ 上下
固有スキル 無し
スキル 無し
魔法 無し
「無い!無い!無いー!!あの女神!チート能力付けるの忘れてやがったァ!!!」
全力で逃げるもジワジワとオーガとの距離が詰まっていく。
このままでは喰われてしまう。倒すしかない……と覚悟を決めた俺はオーガと戦うことにした。
「来いよ!クソオーガ!!」
聞くに絶えない叫び声を上げ、オーガは手に持つ棍棒を振り下ろしてきた。
「恐れたらダメだ。ここで1歩踏み込む!」
イツキは目にも止まらぬ早業で、オーガを投げた。しかし、この程度ではどうということが無いのか、オーガは立ち上がろうとしていた。
「殺るしかないか……悪く思うなよ」
イツキは首を折り、オーガを倒した。
体に力が漲るような気がしたイツキは、ステータスを確認すると
「レベル30!!??いやいや、いくら何でも上がりすぎだろ……このくらい普通なのか…?」
何も分からない俺は、とりあえず街を目指すことにした。
一方、天界では。
「あー!!!さっきの人にチート能力上げるの忘れてました!!どうしましょう……まぁ、どうにかなりますか。もしもの時は手助けしてあげましょう。樹様なら大丈夫でしょう」
女神アリアは慈悲深い女神ではあるが、面倒臭がりで抜けた所がある女神でもあった。
「ここが…アグノリア!!」
如何にも異世界って感じだ!俺の居た世界と違って街は大きな壁で囲ってるのか…魔物から街を守るためか?
「イツキ君。冒険者ギルドはここを真っ直ぐ行ったところだよ。助けてくれてありがとう。何か困った事があったらいつでも訪ねておくれ」
「ありがとう!商人のおじさん!」
イツキは道中助け、街まで送ってくれた商人のおじさんにお礼をして別れた。
イツキは道を真っ直ぐ歩いて行くとそれらしい建物に辿り着いた。
「これが冒険者ギルドか…な、なんか緊張するな…」
初めての場所はどうにも緊張してしまうが、異世界に行ったところでこれは治らないようだ。
扉を開けて中に入ると、筋骨隆々な男、剣を持つ者、大きな鎧に縦を持つ者、ローブを身に纏い杖を持つ者。これぞ冒険者といった風貌をした者が集まっていた。
キョロキョロしつつ受付ぽいところに行くと、スタイル抜群で綺麗な女性が立っていた。
「ようこそ冒険者ギルドへ。受付のカイラと申します。本日はどうされましたか?」
「あ、えっと冒険者登録をしたくて…」
「冒険者登録ですね。それではこの用紙に必要事項の記載をお願いします」
この世界の言葉は見かけない文字だが自然と読めた。転移する前に説明があった通り、こちらの世界で不自由が無いよう読み書きが出来るようだ。
「すみません。魔法の属性って…」
「はい。属性はこちらの水晶に手を置いていただくと分かります」
なるほど…と水晶に手を置くが何も反応が無い。
「あのぉ…これは…」
「え、えっと…イツキ様は魔法適性が無いようですね」
「適性が無いと冒険者にはなれないんですか?」
「い、いえ、適性が無くても冒険者にはなれます。しかし、魔法が使えないと冒険者として成功することは難しいかと…」
「良かった…冒険者になれるのか。それなら大丈夫です!冒険者になります!」
「かしこまりました。こちらは冒険者プレートです。イツキ様はブロンズランクからのスタートとなります」
「ブロンズ…?」
「そうです。冒険者にはランクがあり、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナの4段階がございます」
「プラチナが1番上なんですか?」
「い、いえ…一応プラチナの上に英雄という称号がございますが、この称号は、かつて世界を救ったとされる勇者 アグノリア様しか手にした事が無いものです」
なるほど…実質プラチナが1番上ということか。
「わかりました!ありがとうございます!」
「いえ。それでは、イツキ様頑張ってください」
微笑んでくれたカイラについ見蕩れそうなった。
冒険者を頑張ればカイラの評価が上がるかも…と邪なやる気が出たイツキだった。
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