個性的ギャル軍団に目をつけられ俺の平穏な日常は終わりを告げた

田中又雄

第1話 俺の平凡な日常

 廊下に張り出された一学期末のテスト結果を見て思わず頬が緩む。


 1年最初のテストは50位前後を彷徨ってきたが、それから猛勉強して、2年最初のテストで見事に1位に輝いた。


「1位の朝川って誰?ほぼ満点じゃん。すげっ」


 後ろから聞こえるそんな言葉に更に表情筋が緩みそうになる。


 その場を後にし、優越感と満足感に浸りながら教室に戻る。


 なぜこんなに勉強を頑張ったのかと言うと、同じクラスの清楚系美少女【菊原 凛奈】さんが、頭がいい人が好きだと言ってるのを聞いたからだ。


 そう、俺は彼女に片思いをしていたのだ。

別に話したことはない。

つまり見た目の情報以外は持ち合わせていないのだ。


 俺の話を出さないかと、チラチラと彼女のことを見ていると、彼女の周りの女子がこんなことを言う。


「凛奈、今回2位だったんだー。てか、朝川って頭よかったんだー」


 ナイスパスだと、寝たふりをしながらそんな話に全集中する。


「そうだね。今回は負けちゃった」

「てか、凛奈さー、前に頭いいやつ好きって言ってなかった?」


 最高のセンタリングが挙げられる。

あとは、軽くタッチするだけでゴールだ!


 そう思っていると、彼女は興味なさそうに呟いた。


「私の言う頭がいいって勉強ができるって意味じゃないから」


 そんな言葉を聞いた瞬間、最高に見えたパスはキーパーに弾かれ、ボールはそのまま大気圏の奥に消えていったように感じた。


 分かっていた。

何とも浅はかな考えであることくらい。


 だけど、それでもちょっとだけ心が痛かった。


 ◇駅前


 テストの結果発表された週の土曜日。


 気分転換のために、1人で駅前の本屋に来ていた。


 そうして、話題のラブコメラノベを購入し、満足した俺は普段であれば入らないハンバーガーチェーン店に入り、こちらも話題になっていた特大ハンバーガーを購入し、窓際の1人席で食べ方に苦労しながらもそのおいしさに感動していた。


 すると、後ろの方から声が聞こえてくる。


「でさーwまじあれあり得んくてさーw」

「しろぴんはぁ〜、いっつもそうだよねぇ〜」

「...別に。興味ないんだもん」

「見て見て!あの人、眉毛が葛飾区亀有公園前派出所の警官みたい!」

「...あんたは何言ってるの?」


 聞き馴染みのある騒がしい声に思わず体が縮こまる。

いや、制服でもない俺の存在に気づくわけもないか。


 そう思っていたのに...。


「あれぇ?あのひとぉ、うちのクラスの人じゃない〜?」


 自分のことじゃない。自分のことじゃない。


 そう願っていたが、その願いは叶うことなく、真後ろに気配を感じる。


 間違いない...彼女らはうちのクラスのギャル軍団だ。


[金村 凛奈]

派手な金髪が印象的で、まさにギャルらしいギャル。常に語尾には『w』がついていそうな話し方をしているのが特徴的なギャルである。

【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093088668032939


[桃田 有乃]

ピンクの髪色のゆるふわ系ギャル。話し方もゆっくりマイペースで優しい雰囲気のお姉さん感万歳のギャルである。

【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093088668075462


[神原 白]

白髪でダウナーな雰囲気漂うギャル。常にローテンションでつまらなさそうにしているちょっと怖い感じのギャルである。

【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093088668104542


[青野 香里奈]

青い髪で常にボケることをやめない、ハイテンション系ギャル。誰から構わず話しかけるコミュ力の化け物系ギャルである。

【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093088668561687


[赤川 瀬奈]

赤い髪をしているツッコミ担当のギャル。しかし、仲の良い4人以外には冷たく、不用意に男子が近づかないのは彼女の存在があるからである。狂犬系ギャルである。

【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093088668131107


 ...やばい。絡まれた。


「うわ!ほんまやー!レアポケモンや!」と、青野さんが近づいてくる。


「ちょっと。1人にさせてあげなよ」と、赤川さんが制す。


「あ〜、えっとぉ〜...朝顔くん?」と、小首をかしげる桃田さん。


「...朝川ね」と、呟く神原さん。


「ウケるw1人でそのバーガー食べてるのウケるw」と、金村さんが笑う。


 俺の平穏な日常はこの瞬間をもって終わりを迎えたのであった。

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