第64話 フロイエバウメ
「
ドォ!――と赤い槍がその空中の蓮華の花のような
「メメメさん!」
振り返るとそこには既に、次の
「おノレ名乗りを邪魔すルナど、戦士の風上にも置ケヌ!」
ドォ!――と再び
ゴッ、ゴゴッ――と槍は、メメメの前の見えない壁に弾かれる。壁は一瞬だけ黒い
ドォン!――と空へと響く
「退かせろ」
――と短く私に告げたメメメはさらに次の詠唱へと。
「皆さん、下がって! 魔法が来ます! 魔族から離れて!」
ズズン!――
ただ、
「メメメさん、あいつ、動けないようにできませんか!?」
「なんだって!?」
「ミュルスキ・ヤ・ミュルスキ!」
答えを待たず、私は魔法の兜の力を発動させ、
狭い階段の上には瓦礫が積もっていた。足場の悪いなか、私は魔族の元へとよじ登っていくと、
――大きい……。
ジャラジャラと、その右腕に食い込んだ鉤は鎖と共に瓦礫の中へ引っ張られる。
すかさず飛びついた私はその額へと掌を押し付け――
「大人しく私の質問に答えてください!」
それが額を抑えつけた途端、張りのある滑らかななめし革のような柔らかさになった。
「ワカった……」
ざわり――と周りからどよめきが聞こえたが、構わず問いかける。当然のように
「勇者教の信徒をどうやって操っているのですか!」
「やツラは弱クテ愚か。叩キヤすい敵と適当な大義名分を示しテヤれば、徒党を組ンデ仲間を襲う」
「誰の命令でハルキナを襲いましたか! 勇者教に命じているのは誰!?」
「
「あなたのような魔族が他にも居ますか! 役目は!」
「……
私は階段下から見上げる戦士たちを見降ろした。
「聞こえましたか! 何か対処方法を!」
「アミラ、あなた……」
デリータが目を丸くしていた。
「アルマハシアが作る聖域の中には魔族や敵対的な者は入れない。彼女の聖域は強力だが、それでもせいぜい半径90尺までだし、その場を動けない」
歩み寄り、淡々とメメメが説明した。
「アルマハシアを守って前線に出し、逃げる人たちを助けましょう」
「ダメだ。アルマハシアが危険だ。せいぜいこの二ノ門までだ」
「師匠! ワたし、大丈夫です! アんミラ、連れてって!」
「……お前ら、アルマハシアが指先ほどでも怪我してみろ! 高くつくから覚えておけ!」
メメメがハルキナの戦士たちに睨みを利かせる。
それに応えたのはデリータだ。
「任せておいて。アルマハシア様、参りましょう。――みんなァ! 押し上げて行くぞォォ!」
デリータは怒声を上げると、制圧した信徒の見張りだけ残して門を潜っていく。
戦士たちがロロを引いて門を潜らせると、アルマハシアを乗せて引いていった。
「そいつはどうするんだ? 脅威は無いのか?」
メメメが
「敵対は! まだやるならこの場で処します!」
「戦ワナい。降参だ」
「嘘はありませんね!」
本当は心の中が読めるのだが、周りの者にも聞こえるように確認した。
「ナイ」
「ならば! この場から消えなさい!」
鎖と鉤が消えるとともに、さっと
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