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藍田あも
第1話 生徒会と私
私はウィズディア子爵家の長女、ミスティカ。
下には5人の弟妹がいる。
家族仲は良好なものの、決して裕福ではない。
14歳まで領地から1番近い高等学校で学び、15歳からは国中の貴族が集まる王都の貴族学園へ通い始めて1年が経った。
高等学校は富裕層の子どもや、ごく少数ではあるものの、裕福とは言えない家の優秀な子どももいたが、貴族学園は名前の通り貴族しかいない。
子爵家は身分が低い方なので肩身の狭い思いをするかと思いきや、基本的に全てのことは身分順なので諍いは起こらないし、同じ身分の人同士で固まるので普段は気にならない。
そう、普段は…。
入学試験の結果がトップクラスだったようで、身分が上の方々で構成される生徒会のメンバーに異例の抜擢を受けてしまい、放課後は肩身の狭い思いをしている。
1部のメンバーが振られた仕事を私に全て押し付け、自分たちは報告会と称してお茶会を楽しんでいる。
その筆頭が生徒会長であり、スペルキャス公爵家跡継ぎのアルノール様だ。
次男でありながら跡継ぎとして公表されていたのでとても優秀な方だと思っていたが、長男のイルミネル様にご持病があり跡を継ぐことができないだけで、ご本人は成績も中間より下…遠慮なく言ってしまえば男爵家や子爵家がメイン層を占める下層の中間辺りを彷徨われている。
教育費を潤沢に使える上の家柄の方々は基本的に成績優秀者になるので、成績も基本的には身分順になりやすく公爵家の方でこんな成績を取ったことがある方は他にいらっしゃるのだろうか…という状態なのだが、本人は全く気になさっていないご様子。
生徒会の仕事も「会長の仕事は皆に仕事を割り振ることで、全体を把握するためには皆の報告を聞き調整しなければならない」と言って別室でのお茶会以外は何もしない。
あ、調整といって仕事をしない仲良しのご令嬢やチヤホヤしてくれるご令息の仕事を私に押し付けることもなさるわね。
そういうわけで、私のもとには常に7人分くらいの仕事が溜まっている。
生徒会メンバーは15人なので、半分程の仕事を私1人で抱え込んでいるような状態だ。
生徒会は家柄で選ばれた者と、成績で選ばれる者がいて、王族や公爵家の者は基本的に在籍しており、余った席を成績優秀者で埋めるため、生徒会には低くても伯爵家くらいまでの者で構成される。
あ、今日はイルミネル様がいらっしゃるのね。
放課後に生徒会室に足を踏み入れた私はホッとする。
イルミネル様は公爵家の方なのに、仕事を押し付けてこないどころか私が抱え込んでいる仕事を本当の意味で調整してくださったり、手伝ったりしてくださる。
「お疲れ様、ミスティカ嬢。
これで全員揃ったね。皆、少ない人数で大変だと思うが生徒会の仕事は就職する上で大きなアドバンテージになる。
済まないがよろしく頼む」
そう、生徒会の仕事は少し家や領地の経営に似ている。
そのため自領を率いていく者や他領に嫁いだり、就職したいと思っている者への大事な実践の場になっているので、仕事に手は抜けない。
学園から発行される就職推薦状に、生徒会員は別紙がつく。
自分が処理した書類の枚数やその評価が書かれる。
家は弟が継ぐので、見た目があまり良いとは言えない私が他領に嫁ぐためには成績が必須なのだ。
ちなみに私が自領に残らない理由は、優秀なものの私よりは成績が劣る弟の下に私がいると、弟の立場が危うくなるという両親の判断だ。
そんなわけで、今日も今日とて目の前の書類に集中する。
イルミネル様が割り振った書類は普段に比べると格段に少なく、日が暮れる頃には全ての書類が終わっていた。
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