あの日の景色
@naomizuki
第1話
もしも、人が何度も人生をやり直しているのだとしたら、私はなんて愚かな人間なのだろう。
あの日、あの時、私はどれだけあの言葉を飲み込んだのか。
「うん、一緒がいいね。」
たったそれだけの言葉を、私は言えずに今生きている。
枕の下から鳴り響くアラームで目覚める朝。
隣で眠る夫に気遣いながらベッドから這い出る。
子供たちはまだ寝ている。出産で崩れた体型を隠すような洋服に着替えながらキッチンへ向かう。
私が夢見ていた生活は、こんなだっただろうか。
理想と現実は違うとわかっていながらも、遠い記憶が私を過去へを誘う。
あの日、私はどうして…。
焦げ付きそうになる卵焼きに慌てて現実へと引き戻される。
終わったのだ。もう、とっくに。
青春時代の思い出は、美しいままがいい。
わかっているのに、私は今日も過去の後悔を引きずったまま家族の朝食を作っている。
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