第10話 叶愛

叶愛とあ。ごめん、消しゴム貸して!」

「うん、いいよ。はい、どうぞ」


 高校2年の叶愛は、男女問わず誰にでも優しい。どんなことにも笑顔で対応する。

たとえ、親友が自分の好きな男子を好きになっても、なんとも思ってもないように接してしまう。


「ねぇねぇ、叶愛。聞いて聞いて。2組の亮くんとさっき目があったんだよぉ。すごくない?」


「へぇ、そうなんだ。よかったじゃん」

「次、移動教室で合同の授業なんだよね。近くになるぅ! 楽しみ」


  叶愛は、本音を隠して、亮を好きな実花を応援する。本当は叶愛も亮が好きだった。


「叶愛ってさ、亮くんと同じ中学だったよね。部活って何入ってたか知ってる?」

「うーん、確か、サッカー部だったと思うけど。高校では陸上部だっけ?」

「サッカーなんだ。なんで、高校でサッカーしないのかな」

「練習量が多くなるからじゃない?」

「ふーん。叶愛詳しいね」


 叶愛は、冷や汗をかいて、静かになった。近くを亮が通り過ぎようとする。


「よぉ!」


 誰に声をかけたんだろうと実花は首をかしげる。亮は叶愛の顔をじっと見る。


「叶愛」


 亮が声をかけてきた。叶愛の顔が固まった。


「叶愛、どうかした?」


 実花は、変な顔の叶愛に疑問符を頭に浮かべた。

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