第10話 保健室で正座
「馬鹿かお前ら」
「「……はい」」
鬼ごっこはすぐに中止になった。私と
治療が終わると、栗枝先生のお説教が始まった。さしもの
「はあ……ったく。これじゃあ目を離した私が馬鹿みたいじゃねぇかよ。いや、むしろお前らが私の予想を遥かに上回る馬鹿なのか……はぁ」
先生が何度目かの溜息をついた。入学から三日目でこれなのだ。頭も抱えたくなるだろう。
(その要因の三分の一を私が担っているわけか……)
本当に馬鹿なことをしたと、私は深く反省した。
「いいか? この授業の目的は、基礎体力の底上げだ。ついでにこの際だから言っておくと、期末試験にも関わることだ。だが、
「はあ⁉ なんでこいつらのせいで、あたしまで退学にならなきゃいけねぇんだよ!」
「だーかーらー、そういうところに協調性がこれっぽっちも無いっつってんだよ! 何でお前は自分に非が無いと思ってんだ!」
声を荒げる
やれやれ、といった様子で先生が軽く頭を振る。
「Ⅱ科B組に振り分けられた時点でほとんど問題児確定だし、実際私だってそうだったわけだが……ああ、そうか。だから説教したところで意味もないか……」
一人で何かを納得し、先生は真面目な顔で私達を見回した。
「試験に不合格だった場合退学になる話についてだが、私は好き好んでお前らを退学にしたいわけじゃない。お前らだって、せっかく初池に入学できたのに退学になるのは嫌だろ? だから、合格するために、皆で協力してほしいんだ。誰かと協力して物事を成し遂げるというのは、相手のためにも、自分のためにもなる。お互い切磋琢磨することで、より高みにのぼることだってできる。……私もここに入学した当初は、何で大人しく授業を受けて他人と仲良くしなきゃいけないんだって思ってた。だが、ある日私の前に現れた奴がこう言ったんだ。『独りよがりの強さに酔ってる奴はダセェ』ってな」
先生は懐かしむように遠くを眺めながら言った。私達はそれを黙って聞く。
「言われた時はクソムカついたが……実際、図星だったんだよな。他の奴らは弱いと勝手に決めつけて、自分はあいつらとは違うと慢心して。だが、それを言ってきた奴と戦ってみたら……コテンパンに叩きのめされた。悔しかったよ。弱いと思ってた奴に負けて。でもな、そのお陰でそいつより強くなってやろうって、がむしゃらに頑張るようになったんだ。二度と負けたくない、ってな。それからも何度もそいつと戦って、その度に負けて、悔しくて、魔法を上達させようと努力して、戦って、負けて……。そう。私が努力している裏で、あいつも努力を重ねていたんだ。だから、あー……話が長くなったな。まぁ、何が言いたいかっていうと……寝るな火野屋」
ズコッ!
またしても剛速球のチョークが
「何すんだよ⁉」
「人がせっかくいい話をしてる時に寝るな! ったく。もういい、話は終わりだ。興が削がれた。とにかく、お前らは協調性を高めろ。それが試験に合格する鍵だ」
先生は最後にもう一つ大きな溜息をつくと、そのまま保健室を出ていった。残された私達の間には、何とも微妙な空気が流れた。特に
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