第8話 強制参加体育
火傷の治療薬を作らされた理由が判明したのは、翌朝のことだった。
週に二度の体育の授業。こればかりは体調不良でもない限り強制参加らしく、昨日は神社にいた彗も、昨日一日姿を見せなかった
「全員揃ったな~。偉いぞ~」
同じくジャージ姿の栗枝先生は、全員出席したことにご満悦の様子。にかっと気持ちのいい笑顔を浮かべている。それがむしろ、私に嫌な予感を与えていた。おまけに
「魔法を使うのも、魔法薬を調合するのも、意外と体力勝負なんだ。例え弱い魔法であろうが使い続ければ疲弊するし、魔法薬だって、ものによっては何時間もかき混ぜ続けなくちゃいけない。そんな時にものを言うのが基礎体力だ。体力の有無が、勝敗を決める。っつーわけで、お前ら三人には火野屋相手に鬼ごっこをしてもらう。お前ら……特に
「そりゃあ、あたしの名前、天上天下唯我独尊の天って書いてアメだからな!」
「お前は自分の名前を説明する時に、いちいちソレ言わないと気が済まないのか……?」
元気よく答える
「それはさておき、いきなり始めるよりは、まずはウォーミングアップからだな。とりあえず全員でグラウンド二周な。はい、よ~いどん」
「うおっしゃー! 行くぞー!」
「え、え⁉ もう⁉」
突然の開始の合図に、張り切って走り出した
「ほい。お疲れ様~」
二周走り終えた私達に、先生が労わりの言葉をかけた。久し振りに走ったからか少し息が上がっているが、これから鬼ごっこをするのに支障が出る程でもない。……のは私と彗だけで、未琉は顔を赤くして息を切らしていた。どうやらついていくのがやっとという状態だったようだ。走り始める前と様子が変わっていない
「話に聞いてはいたが、
「……ぅ」
小さくだが明らかに拒絶の意思を込めた呻き声を出す未琉を、先生がどこぞへと連れていった。体育の授業という都合上、未琉は現在タブレット端末を持っていない。あれがないと会話ができないのかは不明だが、疲れたとか喉が乾いたとか、そういった意思を伝えられるのかが気になり、少々不安に思う。無事にこの時間を終えられればいいのだが……。
対して元気いっぱいの
彼女の背後で起きた爆発と共に。
「……え。何……?」
腕組みをし、自身に満ちた顔で爆風を受ける
「鬼ごっこくらい知ってるだろ? 鬼から逃げる。ただそれだけだ。お前らはあたしから逃げればいい。……そう。爆発を起こしながら追いかけ回すあたしからなぁ!」
どごおっ‼
またしても天の背後で爆発が起きた。しかもさっきよりも大きい。
「な、何で⁉ 何で爆発⁉」
殺す気か⁉
「だってフツーにやるだけじゃつまんねーだろ? それに昨日、あのちっちゃい先生から言われたんだよ。『お前の特性を十分に活かして他三人を鍛えてやってくれ』って。あたしの力が必要だってんなら、力を貸さなきゃ正義の名折れ!」
ニッと笑みを浮かべる
(これか……)
こうなるとわかっていたから、先生は昨日火傷を治す魔法薬を調合させたのか……!
(先生が午後の授業を未琉に任せていたのは、
「ちなみにあたし以外魔法使うの禁止な。これも先生が言ってたルールの一つ」
「あ、悪魔……」
彗が絶望に満ちた声を出した。もしかして魔法の使用が認められていれば、私を置いて一人で逃げる気だったのだろうか。
「悪魔だぁ? ちげーよ。あたしは……正義の味方だあ!」
どばああああああん‼
「いや絶対違うよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお⁉」
一際大きな爆発を合図に、私と彗は走り出した。こうして、あちこち爆発させながら迫ってくる
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